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イラストレーター・漫画家の小山健さんへのインタビュー企画の前編。

手足をのばしてパタパタする』や『死ぬ前に1回やっとこう』などの書籍をはじめ、雑誌やウェブメディアでの連載を手がける小山さん。

自分自身が主人公となり、女性への欲望や仕事にまつわるリアルな体験を作品にし、読んでいる人をドキっとさせてしまうストレートな表現と愛くるしいイラストのギャップが魅力です。

前編では、これまでの経歴や漫画作品について、ストレートな漫画の内容による仕事の影響など、本人にお話を聞いてきました。

小山健
1984年奈良生まれ。東京都在住。
会社員時代に趣味でブログに描いていたマンガ「手足をのばしてパタパタする」をきっかけにマンガやイラストを様々なところで執筆。2013年に独立以降、雑誌・書籍・WEBなどで幅広く活動中。


漫画家になるまで

ー職業は漫画家ですか?

漫画家、イラストレーターって名乗ってます。

ー出身地は?

出身地は奈良県で、小学校2年生まで住んでいて。そこから三重県の名張市っていう、誰も知らないところで育って。18からちょろちょろ大阪の学校に行って、二十歳過ぎて大阪に住んで。で半年前にここに来ましたね。東京に。

ー大阪では、同じくイラストレーターや漫画家のお仕事をされていたんですか?

2012年のはじめから仕事をしていて。なし崩し的に漫画家になったんですよ。それまで普通の仕事をしていたんですけど。

ーそれはイラストではないお仕事ですか?

印刷の会社で働いていたんですけど。ブログをずっとやってみたくって、パソコンを買ったんですよ。やっとパソコン買えるぐらいお金が貯まったぞって。で、そのブログをやってたら仕事がきたんですよね。

ーそのブログにはイラストを載せていたんですか?

ほぼ漫画ですね。

ー最初のお仕事ってなんだったんですか?

関西のローカルで司会業をやっている人が手帳を出すとかいって、その人をキャラクター化して、絵を描いてほしいっていうので。関西色めっちゃ強かったんですよ。でもそこから東京の仕事ばっかりになったので、引っ越してこようと思って。

ー東京ではウェブのお仕事が多いですよね。

ウェブが多いですね。でも書籍の表紙やったりとか、雑誌とかもちょろちょろあります。漫画が多いですね。イラストも描きますけど。

ーイラストと漫画どっちがやりたいとかありますか?

漫画家になりたいはずやのに、二十歳ぐらいのときに、一週間締め切りに追われ続ける人生が大変そうと思って。で、イラストレーターになりたいってずっと言ってたんですよ。それを目指していたはずなんですけど、気付けば漫画家になっていて。

ーいまは締め切りのある漫画は描いているんですか?

連載といっても2つくらいなので。しかも短い4コマみたいなのはあるんですけど、全然つらくなくて。本当にいろいろなことをしているんですけど、漫画かイラストかというと、漫画に絞っていきたいですね。載せるところも、一箇所ぐらいに絞って、後は何もやらないでいいっていうのが一番いいですね。

漫画について

ー会社員時代にブログを始められたようですが、漫画はどこで勉強されたんですか?

ずっとブログをしたいなって思ってて、それまで漫画も何も描いてなくて。高校生くらいのときに、パソコンある家もあればない家もあるみたいな年代で、二十歳過ぎたら、みんなある感じやったんですけど、お金がなくてパソコンを買えなくって。

めっちゃブログとかやってる人は羨ましいなと思って。ブログをしたいからマックを買って。いざブログを開設して、漫画っていう発想はそのときあんまりなくって。イラストレーターになりたいっていう嘘もついていたので。あとは二十歳過ぎたくらいだったので、オシャレじゃなきゃいけないとか、アーティスティックじゃないといけないというのもあったので、最初はシュールな絵というか、おしゃれっぽい絵を載せよう、それにポエムを添えようっていう感じで描いていて。まったく何もひっかからず、だれも面白がってくれずだったので。よし、4コマを描こうと(笑)

ー学校に通って、絵を勉強されていたってことではないんですね。

絵はずっと小学生くらいから描いていて。一応専門学校が絵の学校やったんですけど。かといって学校のおかげでパワーアップしたみたいなのも全然なくって。結構ね、多摩美卒、ムサビ卒、絵の専門学校卒っていうと、あ、だから絵が上手なんだとか、そこでいろいろ学んだんだと思われがちなんですけど、全然そんなことない(笑)

ーそうなんですね(笑)

あそこは全然パワーアップの場所ではなく、ただただそういう関係の友達を作る場所っていう。

ーそれでは、自分で描きながらパワーアップしていったってことなんですね。

完全に才能ですね。

ー(笑)

自らのもって生まれたものです(笑)。専門学校に行ってたおかげで描けるようになったんだって思われるのが悔しくって。高卒っていうことにしてます(笑)。独学って思われたい。

ーじゃあ、そぎ落としてそぎ落としてのいまのスタイルで、描こうと思ったらデッサンも得意だったりとか?

いや、デッサンの授業もあったんですけど、あれも本当に生徒をうまくさせようなんて気概は学校にはないので。体験みたいな感じですね。だから全然うまくなることもなく終わって。

ーそんなもんなんですね。

デッサンのレベルでいったら、10段階で2とかじゃないですかね。

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影響を受けたものについて

ー漫画には所々パロディが入っていて、いろいろなところからの影響が見られますよね。

漫画とかゲームが好きな少年だったんですよね。

ーいまも漫画とか読まれたりするんですか?

ほとんど読まなくなってしまって。でも、東村アキコは読みます。雑誌はほとんどめくってないですね。

ー『ジャンプ』は読んでないんですか?

『ジャンプ』は家に毎週親父が買ってきてるっていう家やって、あの頃はずっと読んでましたね。『ドラゴンボール』から何から。兄貴がいるんですけど、兄貴がそういうオタクな兄貴で。兄貴の本棚から、『ジョジョ』をもらってきたりとか、ゲームの話をしたりとか。

ーイラスト自体は、どこから影響受けたんですか?

漫画はずっと好きで、影響はたくさん受けていると思うんですけど。一番は桜玉吉っていう、ファミ通で昔2ページ漫画を描いていた人なんですけど。日記漫画を描いていた人で、やっぱり日記漫画っていうのも一緒ですし、絵の感じとかもすごい出てると思うんですけど。

ー自画像もユニークですよね。最初ぽっちゃりされた方なのかなって思ったんですけど。

そうですよね。似ても似つかないですよね。

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小山健さん自画像

ー自画像の髪の色も金髪ですけど。

金髪にはしたこともないですね(笑)。でも漫画家が自分自身を描く漫画ってあるじゃないですか。あのキャラクターって大事だなって思って。最初漫画描くときに。いくつか、描いたと思うんですよね。どれにしようかって。たぶん一番スター性のあるやつを選んだらこうなったっていう。これをすごい普通の少年ぽく描いてしまうとダメだなって思ったんです。

いくつかスケッチして、「こいつ気になる」と思って。

欲望にストレートな表現について

ー漫画を見ていると、欲望をストレートに表現していますよね。小山さんの思いそのままなんですか?

みんなが思っていること、そのままだと思うんですけど。男性陣すべて。

ーストレートですよね。

言っていこうと思って。

ー触りたいとか、アイコラ作っていたとかは隠したいじゃないですか。

アイコラ作ってたとかは絶対言っちゃダメなことですよね(笑)

ーカッコつけたいっていう気持ちも漫画の中では見えてくるんですけど。

気持ち悪がられちゃダメですね。

ーなぜ見栄がないのかが気になりました。

鬱屈した、隠し通していた期間がすごくあって。高校・専門学校まで。ずっとみなさんと同じように、アイコラ作ってたとかは絶対に言うまいとしてたんですけどね(笑)。漫画を描いて友達にウケたんですよね。それでどんどん嬉しくなっちゃって。で、「描くことないなあ」ってところまできて、そうすると、デッドゾーンにあるパンドラの箱を開かないと、笑ってもらえないみたいな。

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ーそういったネタ以外にも、共感できるところがすごく多くて。電車で車掌さんが顔出しながら走ってるところをビンタするっていうのとか。

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いつも思うこと

ふっとやってみたいと思っても、そのまま終わりますもんね。自分がそう思ったことすら気づかない弱さですもんね。

ーそんなに弱いものをどうやって覚えておくんですか?

0.2秒くらいしか思わないですもんね、たぶん(笑)。ほんとに描くことないってところまで描いて。敏感にならないとダメだっていうところまでなったと思うんです。ライトなのは出し尽くして。なので、もう逃すまいとしているんだと思うんですけど。

ー思いついたらサッとメモしたりするんですか?

そうですね。携帯のメモみたいなのに全部残しておいて。そういうネタ帳みたいなのはあるんですよ。だから、車掌さんのやつだったら、「車掌ビンタ」みたいなのを書いておいて、あとで見てオーディションして、いけそうだったら描くっていう。

ー他にも女性の裸を見たは、すごく話題になってましたよね。

あの、あれですか、ぼくがヌードデッサンではじめて裸を見たやつですかね。そういうのが3つ4つあって、仕事が来るようになったんですよ。だから味をしめて。言えばいいんだと思って。あんまり気持ち悪がられなくて、思ったより。

ーイラストのテイストが理由なんですかね?

イラストがかわいいですもんね(笑)

ーマイナビの連載の「見捨てないで下さい」。あの中で、仕事を依頼してきた人がギャラを書かないってネタが話題になりましたが、仕事に影響はなかったんですか?

ありますあります。あれはまずいことをしてしまったなって(笑)お仕事をくれる人に対して、文句を言おうって、マイナビさんとの最初の打ち合わせのときにしてしまったんですけど。そこから仕事くれる人に怖がられるっていう弊害がありまして。

ーたしかにちょっと神経質なのかなって思われなくもないですよね。

ちょっと打ち合わせしたときとかに、「こんなことしてたら小山さん怒りますもんね」みたいなこととか(笑)。請求書のことに関してすごく申し訳なさそうに、「PDFじゃないんですけど」みたいな。「わしゃ鬼か」みたいなこと思うんですけど(笑)。

ー本音ももちろんあると思いますが。

そうですね。増長して怒りを書いているので、普段そんな怒っているわけではないんですけど。ちょっと神経質っぽい人にとられてるんじゃないかなっていうのは感じますね。

ーそういった身近な人をネタにするとき、確認はとるのですか?

いや、ほぼとらないですね。でも許されそうな人を出してます。すごい楽ちんなのが、知り合った人を漫画に出すと、すごい喜んでくれて。すぐ親しくなれるというか。人間関係が円滑になりますね。

ーこれまで気まずくなったことはないんですか?

1回めちゃめちゃわかりにくい仕事依頼をしてきた人がいて、それをまるごとネタにしようと思って。それもマイナビの別の部署の人やったので、ちょっと連絡をとって、「ものすごいわかりにくい、ダメな仕事の仕方をしてたんで、晒しあげていいですか?」って許可をとりましたけどね。世のため人のために(笑)

ーそれはおっけいだったんですか?

それはおっけいでしたね。

(つづく)

Photographed by Kenta Terunuma

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