by JL08, CC BY-NC-ND 2.0

1904年に最初の路線が開通して以来、ニューヨーク市地下鉄はニューヨーク市民だけでなく観光客が安価に市内を移動するためにも活躍してきました。

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by Russell McGovern, CC BY-NC-ND 2.0

2015年現在、すべての路線を繋げた総延長は373kmと、これは東京メトロの195kmを大幅に上回る規模。ニューヨーク地下鉄には路線名はなく、アルファベットと数字を使った区別になっています(例えばマンハッタンとブルックリンをつなげる路線の一つは”L”ラインと呼ばれます)。

数字とアルファベットが違っても同じ線路を走ったり、途中で分岐する路線があるなど、路線図をチェックして自分の降りたい駅をきっちり確認する必要があります。

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by Metropolitan Transportation Authority of the State of New York, CC BY 2.0

ニューヨーク市地下鉄はこれまでに何度となく路線の延長や補修工事を行ってきましたが、1970年代からほぼ変わらず、どの駅にも共通したデザインで設置されているのが、構内の標識です。

このデザインを手がけたのは、アメリカン航空のロゴなどで知られるグラフィックデザイナーのマッシモ・ヴィネリ。1960年代後半まで、ニューヨーク市地下鉄の構内標識はどの駅も独自のものを制作していたせいで、地元市民ですら理解するのが難しいと言われていたそうです。

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Courtesey of designboom

そこで白羽の矢が立ったのが、ヴィネリが率いるUnimark Internationalというデザイン会社でした。Unimarkはアメリカン航空、フォード自動車、ジレットといったクライアントを要し、日本でもJRや無印良品のロゴタイプとして幅広く使用されているフォントHelveticaをよく用いることで有名だったそうです。

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Courtesey of New York City Transit Authority Graphics Standards Manual

プロジェクト開始から3年後の1970年に、ニューヨーク市交通局はUnimarkが完成させたNew York City Transit Authority Graphics Standards Manualを発表します。初版の発行以来45年が経ちますが、数度の改変がありながら、ニューヨーク市地下鉄は今でもヴィネリが制定した標識デザインを使い続けています。

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Courtesey of New York City Transit Authority Graphics Standards Manual

ちなみに、この初版のマニュアルには諸事情でHelveticaではなく、兄弟種ともいえるStandard(Helveticaの原型となったAkzidenz-Groteskの亜種)が公式のフォントとして採用されていますが、このプロジェクトがUnimarkを離れた後、1988年にHelveticaへ変更されています。

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Courtesey of New York City Transit Authority Graphics Standards Manual

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Courtesey of New York City Transit Authority Graphics Standards Manual

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Courtesey of New York City Transit Authority Graphics Standards Manual

デザインの歴史を学ぶ上でも貴重な資料であるNew York City Transit Authority Graphics Standards Manualは公的機関の内部文書であったため、初版はすでにほとんどが廃棄処分され、コピーですら見つけるのはたいへん難しいという状況が続いていました。

しかし、2014年にニューヨークのデザイナーが偶然状態の良い一部を発見し、ニューヨーク市交通局の許可を得た上でKickstarterでリイシュー版を制作、予定の8倍の資金が集まる大成功となりました。

ぼくは良いデザインとは人が気づかないもの、そして不変なもの、と教わってきましたが、このヴィネリのニューヨーク市地下鉄の例はそういったグラフィックデザインのお手本みたいなものだと思います。ニューヨークを訪れる際には、地下鉄に乗る前に駅内の標識にちょっと目を留めてみませんか。

[New York City Transit Authority Graphics Standards Manual]

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