顔は動物、体は人。
メガネをかけた猫がバッグを持って二足歩行していたり、頭にリボンを付けた豚が花束を持ってニッコリ微笑んでいたり。かわいいのにかわいいだけじゃない、一度見たら忘れられない印象的なイラストを数多く手掛けているのがイラストレーターの布川愛子さんです。
オーストラリア、オランダ、台湾、香港など国内外問わず活躍。Instagramのフォロワー数は3万人以上と、多くの方から注目されてる布川さんが6月23日(火)〜7月5日(日)、手紙舎2nd STORYみどり荘で展示販売会を開催されました。
2匹の猫と暮らす布川さんは、イラストレーターとして活動しながら、動物の愛護活動にも力を入れています。その布川さんにお話を伺ってきました。
布川愛子(ふかわあいこ)
神奈川県出身。2005年東京芸術大学美術学部デザイン卒業。広告、書籍装画、ステーショナリー、雑誌、絵本などを中心に活動。海外のクライアントワークも手掛ける。著書に「HOLIDAY 布川愛子 ART WORKS」(玄光社)、「Four Seasons かわいいものいっぱいの塗り絵ブック」(グラフィック社)、「ボールペン1本ですぐ描ける “おしゃれで大人な”イラスト練習帖」(宝島社)がある。
布川さんの活動実績はこちら。
−布川さんはイラストレーターとして、いつから活動されているのですか?
2007年頃から活動を始めました。大学卒業後はデザイン事務所でデザイナーのアルバイトをしていたのですが、大好きな装丁作家である名久井直子さんにポートフォリオを送ったことがきっかけで、イラストレーターとしてお仕事をいただけるようになり独立しました。
最初に手掛けたのは、小説家・恩田陸さんの著書「私の家では何も起こらない」の装画でした。書籍は書店に一斉に並びますからきっと色々な方が私のイラストを知ってくださるんですね。そこから徐々に仕事が増えていったんです。
—イラスト以外の作品もありますよね?
封筒や陶磁器などのグッズも手掛けています。イラストレーターとして展覧会を開催していく中で、「来てくださった方が原画より手軽に持ち帰れるものはないかなぁ?」と思って物販も始めるようになりました。最初の頃は封筒を作って売っていたんですが、1枚1枚カッターで切ったり、折ったり、全部手作業で作っていました。私のことをグッズから知ってくださった方も多いんですよ。
今回の展示販売会「Little Village」では、陶磁器、封筒、手紙舎さんとコラボレーションしたスタンプ、バッグなどを展示しました。刺繍作家のsuzukirieさんとのコラボ作品もあります。
—陶磁器には1枚1枚、手で絵を描いていらっしゃるそうですね。
そうなんです。絵にもよりますが1枚描き上げるのに1〜2時間くらいかかります。外箱にも絵を描くときはもっとかかりますね。陶磁器用のインクを使っているのですが、しっかり乾くのに24時間くらいかかります。その後に陶磁器を焼いて仕上げています。
—外箱にも絵を描くんですか?
全部ではないですが描いてます。外箱を切り取ると絵になるので、「額に入れて飾ってますよ!」と言ってくださるお客様もいます。
—展示販売会「Little Village」のコンセプトは?
たまたま見つけた小さな村、そこにしかない小さなお店をテーマにしています。旅の途中に立ち寄った村に、かわいい生きものたちと自然が広がっている、そんなイメージです。
—布川さんの作品の中で、顔が動物のイラストがとても印象に残りました。これを描き始めたきっかけは?
友達が結婚する時にウェルカムボードを作ったのがきっかけだったんです。友達夫婦を動物に見立て、新郎の顔をオオカミに、新婦の顔を鳥にして描きました。これが好評だったんですよ。それ以降、顔が動物、体を人にしたイラストを描いていますが、猫、豚、オオカミ、犬などをモチーフにすることが多いですね。鳥とか顔が長い動物は描くのが難しいんですよ。洋服が似合わないんです。
—顔が動物シリーズの中で、どの動物が人気ですか?
猫は人気がありますよ。
—そのモデルは、布川さんが飼っている2匹の猫?
もともと猫が大好きだったので、家に猫が来る前から描いていたんです。
—猫がお好きなんですね。
実家で猫を飼っていたんですけど、実家を出てから猫を飼っていなかったんです。でも飼いたくて飼いたくて…。ある日、道端で見かけたビニール袋が猫に見えたり、枯れている盆栽が三毛猫に見えたり、道端にいる動物を探してしまうくらいの“末期症状”が出てしまったんです。
で、タイミング良く猫の愛護団体がやっていた譲渡会に行く事になって1匹の猫を引き取りました。それが「まる」です。新丸子に住んでいたので、「まる」という名前にしました。
それからしばらくして、道で小さな子猫を拾いました。それが「つくし」です。多分、生後2〜3ヶ月だったと思うのですが、「その月齢の子猫が道で生きているなんて逞しい!」と思ってこれからも健康にすくすく育ってほしいという願いも込めて、名前を「つくし」にしました。
—布川さんのインスタグラムでまるちゃん、つくしちゃんの写真を拝見しました。
ありがとうございます。猫を飼い始めてからフォロワーさんが増えたような気がします。
—今回の展示販売会では、週末限定で「動物の似顔絵屋さん」を開催していらっしゃいますね。
そうなんです。その方から感じる雰囲気から、お顔を動物に見立てて似顔絵を描かせて頂いています。今回で4回目になりますが、個展などのイベントの時に似顔絵屋さんをやっています。所要時間はお一人につき30分くらいですね。
—「動物の似顔絵屋さん」は、申し込み開始後すぐに満席になったとお聞きしました。
もともと席数が少ないのですが、今回もすぐに満席になってしまいました。お一人の方や、恋人同士で来られる方、最近はお子様も増えています。あと、亡くなった方や昔飼っていた動物のお写真を拝見しながら似顔絵を描くこともあります。亡くなった方や動物がその場にいるかのような雰囲気を感じることもあったり、「不思議だなぁ」と思うこともたくさんあります。似顔絵を描いているとお客様からパワーを頂けたり、色々お話できるので、私にとっても良い機会なんです。これからも「動物の似顔絵屋さん」を続けようと思っています。
—布川さんは動物愛護にも力を入れていらっしゃいますね?
もともと動物が大好きで、自分で猫を飼い始めてからさらに好きになりました。さっきもお話しましたが、うちにいる猫は譲渡会で出会ったり、道で拾って連れてきました。もしちょっと違っていたら処分されてしまったり、道端で死んでしまったかもしれないんですよね。でも、縁があって我が家にやって来た、その子たちの友達や兄弟をできるだけ幸せな環境に連れて行ってあげたいと思うようになりました。何かしたいけれど飼える数は限られている。「今自分ができることは何か?」そう考えて行き着いたのが、私の作品を売って売上の一部を愛護団体などに寄付することでした。まだまだ活動はスタートしたばかりですが、これは一生かけて続けていきたいことです。
—現在、2つの動物愛護団体に寄付されていますね。
今は、「まる」と出会った譲渡会が開催されていた猫の保護施設「smile cat」(東京都目黒区青葉台1-27-1)と、一般社団法人 動物愛護団体「Rencontrer Mignon」(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-5)の2つの動物保護・愛護団体へ寄付させていただいています。今後もいろいろと勉強させていただきながら、出来る事から動物愛護の活動の幅を広げていきたいと思っています。
—最後に、今後の活動や夢についてお聞かせください。
「BOOK FOR PAPER LOVERS」の次回作に携わっています。出版予定は 2015年11月15日ですので、ご覧頂けましたら嬉しいです。また今後は、絵本や洋服のパターンも手掛けてみたいです。絵本はいくつか進行しているお話があるので、じっくりと形にしていきたいです。それから、動物愛護という難しい言葉ではなくても、動物や生き物を大切にしなくてはいけないという思いを伝えられる何かができたらいいと思っています。
取材当日、会場には絶え間ないお客様が。期間中、何度も足を運んでくださる方も多いのだとか。そのお一人おひとりと丁寧に向きあってお話をされている布川さんの姿がとても印象的でした。
作品はもちろん、布川さんの温かい人柄に触れたいと会いに来られる方が、たくさんいらっしゃるのも納得できる、素敵なお話を伺うことができました。
布川さんは、7月28日(火)から8 月8日(土)まで、神宮前のL’illustre Galerie LE MONDEにて開催される猫のチャリティイベント「CAT POWER 2015」に参加されます。8月1日(土)には「動物の似顔絵屋さん」(事前予約制)も開催されるそうですから、ぜひ会場へ!
「世界に一匹だけの愛ネコに、世界に一つだけのツメとぎをというチャリティープロジェクト「Cat’s ISSUE CAT’S CLOW BOARD ART EXHIBITION 2015」に参加。
オーストラリアの世界の猫を救うプロジェクト「Feline Foundation」で、作品とトートバック、 T-shirtを販売。売り上げの一部がチャリティーに。
[布川愛子さん公式サイト、オンラインストア、instagram、Twitter]
取材協力:エージェントハムヤック
Photographed by 岡本英子