5月23日(土)に開催された「小諸ツリーハウスプロジェクト 自然で楽しむアートフェス!with Noma Bar(ノーマ・バー)」に行ってきました。
長野県小諸市にある安藤百福センターで2014年にスタートしたこのイベントは、今回が3回目。豊かな自然の中にあるツリーハウスと、様々なワークショップ、信州の食を楽しめるアートフェスです。
当日はお天気に恵まれ、会場はたくさんの方で賑わっていました。
ラテンバンド「コロリダス」のライブ。
アートワークショップ「木霊紙風船と動物お面を作ろう!」
様々な形にカットした木製の鳥に自由にペイントするワークショップも。
八ヶ岳の麓、山梨を拠点にする行商パン屋さん「山角」。
ノルウェーの素朴なパンと素敵な手作り雑貨、北欧雑貨を販売する「kirkecafe」。
地元の素材を活かしたカクテル、クラフトビールがおいしい「ポーキー」。
たき火でバウムクーヘンや焼きマシュマロを作る、たき火遊びも楽しそう。
森の中で読書ができる「森の図書館」。
新鮮な旬の小諸野菜をたっぷり使ったチキンラーメンが無料で配られ大人気!
そして、このイベントの一番の見どころは、ツリーハウスなんです!
Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出されたデザイナー・佐藤オオキ氏が代表を務める「nendo」、「NASCA」古谷誠章氏、「サムライ」佐藤可士和氏など、様々なクリエイターがデザインしたツリーハウスが点在しています。
bird-amartment/デザイナー:デザイン オフィス nendo
オオムラサキのツリーハウス/デザイナー:KANIKAPILA DESIGN Inc.
そして今回、7棟目となる新作のツリーハウス「Birds Eye View」がお披露目されました。
デザインしたのは、イスラエル出身で現在ロンドンで活躍中のグラフィックアーティストNoma Bar氏。グリーンのグラデーションで彩られた色鮮やかな鳥は、森にマッチしていますね。
来場者の方も興味津々。
後ろ姿がこちら。美しい小諸の景色を見渡せる高台に立っているのが分かります。
「Birds Eye View」という名前の通り、このツリーハウスは鳥の目線で小諸の街を眺めているかのような体験ができるんです。
その景色を見たいと、小さなお子様から大人まで行列ができていました。
階段を登って。
最上段で小諸の景色を堪能。
階段を上りきると、ずっと見ていたくなるほどの美しい景色が広がっています。
このイベント当日、Noma Bar氏がロンドンから来日していたので、お話を伺ってきました。
—まずはじめに「Birds Eye View」のコンセプトを教えてください。
高いところから美しい小諸の景色を見渡せるツリーハウスにして欲しいというお話がありました。昨年、安藤百福センターの森を訪れて、自然豊かな土地の素晴らしさを実際に体験し、ロンドンに戻りました。
私はグラフィックアーティストですが、ロンドンにあるハイゲートウッドという森の中で毎日アイデアスケッチをしています。そこである日、地面に落ちていた2枚の葉を見つけました。手に取ってよく見てみると2枚の葉が上下に重なりあっていて、それが鳥のように見えたのです。
「木からひらひらと落ちる葉が、谷を見渡せる鳥の形のツリーハウスになったらどうだろう?」と、偶然見つけた2枚の葉からインスピレーションを得て、「Birds Eye View」のデザインへと繋がっていきました。
—「Birds Eye View」は、2枚の葉から生まれたツリーハウスなんですね。
そうです。2枚の葉が上下に重なって鳥の形になっています。上の葉は異なるグリーンのグラデーションになっていて、近くで見ると1枚の葉に見えます。そして、少し離れてみると上下の葉が鳥の形を作っていることが分かります。下の葉は見晴らし台に繋がる階段になっています。そして、内部の天井、床、手すりは葉と葉脈の形にしています。
—「Birds Eye View」が完成するまでに時間がかかりましたか?
どんな仕事でも同じだと思いますが、「これだ!」と心底納得するアイデアに辿り着くには時間がかかることがありますよね。もちろん今回のプロジェクトでも、「Birds Eye View」に決まるまでたくさんのアイデアを出しました。アートの中には説明を聞いても理解できなかったり、パッと見ただけでは分かりにくいものがあります。でも私は分かりにくいアートではなく、誰でもすぐに分かるものを表現したいと思い、この「Birds Eye View」に行き着いたんです。
葉の重なり方や角度、グリーンのグラデーションの色合い、葉と鳥のバランスなど、様々な試行錯誤を重ねました。そして内部に階段や手すり、テラスをつけて、人が入る7メートルほどのツリーハウスが完成したのです。
—普段はグラフィックアーティストとして活動されていますが、ツリーハウスのデザインに通じるものはありましたか?
私はイスラエル出身なので、ロンドンに留学した当時は英語ができなくてとても苦労しました。その経験から、言葉が足りなくても絵でコミュニケーションができたらと、ビジュアルコミュニケーションを始めたんです。ビジュアルコミュニケーションは絵や写真などを使って、抽象化してメッセージを伝えることができます。つまりアートは言葉ができなくても、言葉が通じなくても世界中に伝えたいことが伝わるのです。
また、私は1つの絵の中に、2つの異なる意味を持たせるネガティブスペースという作品を手掛けています(作品はコチラから)。ネガティブスペースのように一見シンプルに見えるものでも、その背景には様々なストーリーがあって、見た目以上にたくさんのことを伝えることができます。
「Birds Eye View」もシンプルに見えますが、2枚の葉が鳥を形作っているというストーリーがあるので、グラフィックアーティストとしてのこれまでの経験がこのツリーハウスに活かされていると思います。
—最後にメッセージをお願いします。
「Birds Eye View」は鳥の目線で小諸の美しい景色を見渡すことができるツリーハウスです。葉の中の階段を登って見晴し台に着いたとき、普段見ている景色とは違う「Birds Eye View」が体験できます。葉が鳥を形作ること、内部の構造、見渡す景色など、このツリーハウスを通して、新たな発見やたくさんの経験をして頂きたいです。
そう語るNoma Bar氏。イベント当日は自然を通して様々な発見や体験ができるアートワークショップが開催されました。
森の中にある木、枝、葉、木の実などを使って好きな顔をデザインして作品を作るという内容で、各回満員。親子連れを中心に大盛況でした。
「Birds Eye View」のコンセプトを参加者に説明するNoma Bar氏。
森の中で見つけて来た枝や葉、木の実を使って作品を作ります。
作品が完成したら、Noma Bar氏に見てもらいます。
個性的な作品がたくさん。
こんなにカラフルなライオンも。
最後は、みなさんで記念撮影。
長野の豊かな自然の中でアート、アウトドア、食が一度に楽しめるこの「小諸ツリーハウスプロジェクト」。
次回は2015年11月7日(土)に安藤百福センターにて開催されます。お友達やパートナーと、またご家族連れでも一日楽しめるイベントですので、ぜひお出かけ下さい。
なお、ツリーハウス内部に入ることができるのは、イベント時のみとなっています。通常は安全上の理由から内部に入ることはできませんが、鑑賞は受け付けていますので、詳細は安藤百福センターにお問い合わせください。
<Noma Barプロフィール>
イスラエル出身。エルサレムアカデミーオブアート&デザインにてグラフィックデザインとタイポグラフィーを学ぶ。2001年よりロンドンを拠点に活動。『Time out London』、『Wallpaper』、 『The New Yorker』などの雑誌媒体や、村上春樹作品英語版の表紙、IBMの広告で活躍するほか、ロンドン、ニューヨーク、パリでエキシビジョンも開催、世界各国で活動を展開している。(Noma Barの作品はコチラ)
Noma Bar氏に関するお問い合わせは、「agenthamyak(エージェント・ハムヤック)」へ。
Photographed by「agenthamyak」(インタビュー記事内)、岡本英子