スウェーデン南部の、エルムフルト(Älmhult)という町には、世界最大級の家具・雑貨チェーン、イケアの主要施設が集まっており、そこは通称“イケアタウン”と呼ばれています。
今回ルーミーでは、イケアからオファーがあり、この“イケアタウン”を訪れました。
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この“イケアタウン”にある「IKEA Tillsammans(イケア・カルチャーセンター)」は、創業者イングヴァル・カンプラード(Ingvar Kamprad)さんとともにイケアが歩んできた足跡を伝える、イケア専門の歴史資料館。
800㎡にわたるフロアでは、創業当時からの貴重な品々が、時代を追って、数多く展示されています。
では、いくつかの展示とともに、イケアの原点を探っていきましょう。
ビジネスの原点は「マッチ売り」だった
いまや世界最大級の家具・雑貨チェーンとして君臨するイケアですが、実は、その原点となったのは、マッチ売り。
カンプラードさんは、幼少期、祖父が経営する日用雑貨店で、マッチを売る手伝いに夢中になっていました。幼くして「モノを売り、お金を稼ぐ」という商売の楽しみに目覚めたのです。
「マッチのように金額の小さな商品でも、たくさん売れば、利益を得られる」という実体験を通じて、薄利多売の仕組みを体得し、店にやってくるお客さんとのコミュニケーションから、顧客のニーズを正しく把握することの大切さを学んだカンプラード少年。
このような原体験は、のちに「ユーザーからのリアルな声に常に耳を傾け、より多くの人々に手頃な価格で良質な商品を届ける」という、イケアのビジネスの根幹へとつながっていきます。
弱冠17歳で「IKEA」を設立
”マッチ売りの少年”だったカンプラードさんは、やがて、弱冠17歳にして、「IKEA(Ingvar Kamprad Elmtaryd Agunnaryd)」を創設。フランスから輸入した万年筆や腕時計などを通信販売する事業を立ち上げました。
モノクロのシンプルなカタログは、当時、顧客との貴重な接点であり、イケアと顧客とのコミュニケーションの原点です。
イケアのカタログは、家具販売に進出した1948年以降も、商品の背景にあるストーリーを伝え、個々のライフスタイルにインスピレーションを与える媒体として、ユーザーとイケアをつないできました。
カタログは時代を追って、判型やページ数、ロゴデザイン、レイアウトなどが様々に変化し、イケアの事業成長とともに、配布エリアもどんどん拡大。現在では世界全体で、2億部以上が無料で配布されています。
時代とともに変化してくロゴマーク
カタログと同様、イケアの“顔”として、顧客と常に接してきたのが、ロゴマークです。
イケアのロゴマークといえば、ブルーとイエローの2色からなるスウェーデンカラーでおなじみですが、現在のロゴマークが確立されたのは、1984年のこと。
1951年のロゴマークは、現在のものからは想像もできない、赤白バージョンでした。
ちなみに、「ikea」を囲む「KVALITETS GARANTI」という文言は、スウェーデン語で「品質保証」を表すもの。当時から、イケアの品質に対する意識の高さがうかがえます。
スウェーデン国外に進出しはじめた1960年代から1970年代には、スウェーデン企業であることをアピールするべく、ヘラジカやバイキングなど、スウェーデンにちなんだイラストが、イケアのロゴマークに添えられていたこともありました。
この場所のガイドを務めてくれた、イケア・カルチャーセンターのトレーニングマネージャーで、ドイツ出身のマルクス・ルーケン(Markus Lüken)さんは、幼い頃の記憶を、次のように語っています。
まだ子どもだった僕が、ドイツで初めてイケアを知った頃は、たしか、イラスト付きのロゴでした。当時、ドイツのイケアストアでは、定期的にイベントをやっていて、ヘラジカの着ぐるみを着た店員さんたちが、僕たちをよく楽しませてくれましたよ。
イケアの新しいカルチャースポットが誕生する?
イケア・カルチャーセンターには、各年代ごとに分けて当時の部屋を再現しているコーナーもあります。昔のイケアデザイン、ひいては当時のインテリアのトレンドを振り返ることができます。
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イケアの製品開発の変革となる、歴代のキーアイテムの紹介もありました。例えば、イケア定番のサイドテーブル「LACK」は、ドアの製造技術「ボードオンフレーム」を天板に応用して、軽量化と低コストを実現したそうです。
創業から70年を超えたイケアでは、これまでの歴史をより多くの人々に知ってもらおうと、壮大なプロジェクトを、いま密かに進めています。
イケア・カルチャーセンターの向かい側は、かつてイケアストア第1号店があった、イケアの原点ともいえる場所のひとつ。
現在、この跡地に「IKEA Museum(イケア・ミュージアム)」が建設中。イケアの歴史を楽しくたどることのできるカルチャースポットとしてオープンする予定です。
カタログやロゴマークの変遷からもうかがえるとおり、時代の流れに合わせて柔軟に変化しながら、成長してきたイケア。
その歴史から私たちが学べることは、まだまだ多く潜んでいるような気がします。
ルーミーでは、“イケアタウン”以外にも、ストックホルムやマルメなど、スウェーデンの都市についても紹介していくのでお楽しみに。
Sweden Trip Diary
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Photographed by Magnus Glans, Yukiko Matsuoka
Illustrated by Yurie Sato and Mai Kurosaka