世界最大級の家具・雑貨チェーンのイケア。2015年5月に、イケアの故郷であるスウェーデンのエルムフルトへ世界中のメディアを招き、イケアのビジョンを伝える「Democratic Design Day 2015(デモクラティック・デザイン・デー)」が開催されました。
ルーミーもオファーをいただき、イベントに参加してきました。
イケアは「より快適な毎日を、より多くの方々に(Create a better everyday life for the many people)」をビジョンに掲げ、家具から、カーテン、カーペット、寝装品、食器、家庭用品まで、私たちの日常生活にまつわる様々な商品を取り扱ってきました。
そして、これら多種多様な商品の礎ともなっているイケア独自のデザイン哲学が、「デモクラティックデザイン(Democratic Design)」。“みんなのためのデザイン”、という意味です。
・FORM(優れたデザイン)
・FUNCTION(機能性)
・QUALITY(品質)
・SUSTAINABILITY(持続可能性)
・LOW PRICE(手ごろな価格)
以上の5つの要素がバランスよく成立しているデザインこそ、“みんなのためのデザイン”であり、イケアの商品が目指すべきものであるという考え方です。
イケアのCEO、ペーテル・アグネフェール(Peter Agnefjäll)さんは、イケアの商品開発における方針について、次のように述べています。
僕たちの取り組みは始まったばかり。外部のデザイナーやクリエイターとのコラボレーションを積極的にすすめ、よりよい商品をどんどん提供していきたい。また、環境との調和に配慮し、サステナビリティをより重視していく方針です。
① FORM(優れたデザイン)
世の中をより美しく
個々のモノの美ではなく、家庭によりよい生活をもたらす、美しく心地よいデザインこそ、イケア流の“優れたデザイン”。シンプルで、どんなものとも調和しやすいスカンジナビアスタイルが、基調となっています。
1956年生まれのコーヒーテーブル「LöVET」は、ほっそりスマートな3本脚と、優雅な曲線を描くリーフ形の天板が特徴です。できるかぎり薄く小さくする梱包手法「フラットパック」がイケアに導入されるきっかけとなったアイテムとして知られています。
レトロな風合いが現代の住空間に絶妙にマッチすることで人気を集め、現在も「LÖVBACKEN」と名称変更された改良版が、ロングセラー商品となっています。
② FUNCTION(機能性)
毎日の生活を、もっとラクで、意味あるものに
イケアの「機能」とは、モノがよく機能することのみならず、その機能によって、生活がよりラクになったり、意味のあるものになることを意味します。
「JANINGE」は、住居用にも業務用にも使える多目的チェア。強度や耐久性も十分で、屋内はもちろん屋外でも使えます。背もたれは身体のラインに沿うようにデザインされ、表面には手入れしやすい工夫が施されています。
シンプルなデザインの中に、多くの機能がさりげなく備わっているわけですね。
③ QUALITY(品質)
長持ちし、使えば使うほど、味が出てくるように
イケアは、「人々のニーズに合ったモノが長持ちすれば、そのモノとともにある、人々の心地よい生活も、きっと長続きするはず」との考えから、品質には、長年、力を入れて取り組んできました。
イケアの故郷であるエルムフルトに、品質検査施設「イケア・テストラボ」を構え、日夜、厳しい検査を実施しているのも、その証のひとつといえますね。
④ SUSTAINABILITY(持続可能性)
責任感を持って、人々と地球にポジティブな影響をもたらす
イケアのCSO(最高サステナビリティ責任者)であるスティーブ・ハワード(Steve Howard)さんは、イケアのサステナビリティに関する取り組みについて、次のように話しています。
小さな発明の積み重ねが、やがて大きな変化をもたらします。イケアは、よりよい商品、よりよいサービスを通して、サステナビリティを追求し、世の中にポジティブなインパクトを与えていきたいと考えています。
イケアのキッチン混合栓は、すべて節水機能付き。水圧などは一般的なものとほとんど変わらず、使用水量を最大40%削減できる、環境にも家計にも優しいアイテムです。
ステップスツールの「MÄSTERBY」は、リサイクル素材である再生ポリプロピレン樹脂を使用。
一般に、リサイクル素材からできた製品は、グレーやモスグリーンなど、地味な色合いのものが多いですが、「MÄSTERBY」はビビッドなイエローカラーで彩られています。環境負荷に配慮しながら、デザイン性も追求する、イケアらしいプロダクトですね。
⑤ LOW PRICE(手ごろな価格)
多くの人々にとって、手の届きやすいものに
イケアは、それまで高額ゆえに一部の富裕層しか買うことのできなかった家具を、低価格でより多くの人々へ届けることに成功した、”家具の大衆化”の立役者。
1956年、オリジナル商品の開発・販売をスタートさせて以降も、新たなソリューションや手法を絶えず追求し、コスト削減に努めてきました。
シンプルなデザインと豊富なカラーバリエーションで人気のテーブル「LACK」は、発想の転換によって、低コストを実現した代表例です。ドアの製造技術「ボードオンフレーム」をテーブルの天板に応用し、機能や品質を担保しながら、木材の消費量を削減し、商品を軽量化しました。
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きっと、あなたのお部屋で日常を彩っているイケア商品にも、これらデモクラティックデザインのデザイン哲学が、潜んでいるはず。
イケアが実践するデモクラティックデザインを少し意識すると、商品の捉え方や選び方も、変わりそうですね。
イケアの故郷であるスウェーデン。ルーミーではストックホルムやマルメなど、スウェーデンの都市についても紹介していくのでお楽しみに。
Sweden Trip Diary
#ストックホルム
・深い青と輝く光…ストックホルムってどんな街?
・360度、見渡す限り本のパノラマが広がる図書館に行ってみたよ
・“世界一長い美術館”、ストックホルムの地下鉄アートがすごい#マルメ
・コンパクトシティ「マルメ」には、心地いい日常があったんだ
・マルメの穏やかな日常とサードウェーブコーヒー#イケアタウン探訪記
・イケアが生まれたスウェーデンの小さな村、知ってる?
・マッチ売りから世界の家具王へ…イケアの原点を探ってみたよ
・巨大な階段は、イノベーションが生まれる、みんなの「たまり場」
・みんなに安心して使ってもらいたいから、イケアのテストは厳しいんだ
・名物ミートボールを超える!? イケアに“ベジボール”が近々登場するよ
・ミカエルさん、教えてください「イケアのお宅訪問ってなに?」
・ベトナムのバンブーとスウェーデンデザイナーがコラボしたよ
Photographed by Magnus Glans, Yukiko Matsuoka and Paolo Bona / Shutterstock.com
Illustrated by Mai Kurosaka