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○かつての日本の良さはあっという間に消えていった

かつての日本、といっても明治時代に入る前の日本という意味ですが、そこには近代化・西欧化を進めた現代とはまったく違う世界がありました。

衛生面や医療面は今のほうがもちろん優れているものの、決して江戸時代は悪いことばかりではありません。識字率が高かったことは有名ですし、天文学や数学、医学(麻酔技術)など、世界でもトップクラスの業績が残されていることも事実です。和算の水準の高さについては「和算に恋した少女(全3巻)」というコミックがうまく描いておりオススメです。

イクメンブームも江戸時代にはむしろ当然のことでした。男性が育児をするのは当たり前で、毎日のように子どもの自慢で井戸端会議をしていた(男だけの井戸端会議!)と言われており、今では想像もできません。

かつての消えていった日本の良さを残していく取り組みは、明治末期から大正にかけてようやく動き始めます。柳田國男を中心に民俗学として進められていくのですが、それよりもっと早く、明治の初期に日本国内を踏破し、記録を取り続けた人がいます。

しかもその人は、イギリス人の女性冒険家だったのです。彼女のユニークな冒険記をコミカライズしたのが佐々大河著の「ふしぎの国のバード」です。



○女性冒険家イザベラバードが書き留めた日本のよさ

何も知らずにコミックを読んだ人の多くは、これはフィクション、つまり創作なのだろうと思って読むことでしょう。まさか明治初期にイギリス人の女性がひとりで横浜から東北を目指して旅行するなんて信じられません。

しかし、これは本当にあった話です。Amazon.co.jpで「イザベラ・バード」と検索してみると

イザベラ・バードの日本紀行」(講談社学術文庫 kindle版あり)、
日本奥地紀行」(平凡社ライブラリー)

などの書籍が今でも手に入り、彼女が実在の人物であり、本当の女性冒険家として日本以外にも世界中を歩き回ったことが分かります。

彼女のすごいところは、日本に来る前はハワイを旅してみたり、日本のあとは朝鮮半島を旅してみたり(60代で!)と、一生を通じて文字通り「女性冒険家」であったことです。

そして、政治的思惑や、西洋至上主義にも偏らないまま、日本の文化や習慣、風俗についてありのままを記していくところがとても素晴らしいです。



○ビジュアルで楽しめる日本の文化や社会風俗の楽しさ

第1巻では、横浜に降り立ち、江戸でパスポートを手にして日光までたどりつきますが、服装や小物について細かく描写されていることに驚き、また感動させられます。

日光東照宮なら私たちも当時に近い姿を今でもイメージできますが、巨大な唐辛子の模型を持ち歩くことで「唐辛子売り」を示していた行商人の姿、駄菓子屋の様子とそこに置かれた多彩なお菓子や遊ぶ子どもの髪型、人力車夫の刺青姿など、もはや現代ではイメージすることが難しいビジュアルを、丹念に描いているさまは見事なものです。

アイデアとして「イザベラ・バードの日本紀行」をコミカライズしようと思いついても、それを現実の形にするのはとても大変なことです。作者や編集者がどれだけ資料をあたったか、その労力を思うと頭が下がります。

「日本はすごかったんだ」と押しつけられるのはちょっと息苦しいかもしれませんが、こんなにシンプルな形で、消えてしまった日本の楽しさ素晴らしさが感じられるのだとしたら、それはやはりコミックの力なのではないでしょうか。

このあと、バードさんは北海道に達しアイヌ民族とも交流するはずです。どこまで描ききれるか楽しみです。

ふしぎの国のバード」、一読をオススメします。

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