『鏡の国のアリス』や『ハリーポッター 賢者の石』など、小説や映画にもたびたび登場する「チェス」。定番のボードゲームとして、世界中で愛されています。
ゲームのおもしろさはもちろんですが、魅力のひとつはチェス盤や駒の美しさ。インテリアとしておうちに飾っている方も多いかもしれません。
通常は木や象牙、大理石から作られるチェスを、思いもよらないものから作り上げた人たちがいます。
自動車部品の製造工程のなかで発生した、捨てられてしまうエンジンバルブ。
大阪大学の学生である林稜さんによるアイデア。需要がなくて眠っている不良在庫や刻印がほんの少しゆがんだだけ…など、機能的には問題がないのに廃棄されてしまう“不良品”。
そんな不良品たちが、たまたま触れ合った瞬間に、美しい音を出すことに林さんは注目しました。
「常に動かし、何かと触れて音が出るもの。」
そんな切り口から「チェス」を思いつき、デザイナーの山田敬宏さん、製造メーカーであるマツダの協力を得て、チェスセットは完成しました。
この作品は「アップサイクル」という概念から誕生しています。
「アップサイクル」とは
「リサイクル」に似た概念。リサイクルが再利用であるのに対し、元々の用途よりもさらに付加価値をつけようという方法
工場から出る端材や不良品を、デザインという“ひと工夫”を加えることで、付加価値をつけて蘇らせた「エンジンバルブチェス」。
このバルブが一層美しく見えるのは、捨てるものから新たな価値を見出した林さん、そしてデザイナーと製造メーカーの想いが込められているからだと思います。
ふとした拍子に駒が奏でる音色を聴きながら、チェスを楽しんでみませんか?
協力:
エンジンバルブメーカー 日本精機株式会社
加工協力 マツダ株式会社
デザイン 有限会社リプル・エフェクト 山田敬宏