長年にわたり世界中の子どもたちを魅了してきた『シンデレラ』が、この春、実写映画として公開されます。ブルーのドレスを身にまとうシンデレラのポスターを街で見かけた方も多いのではないでしょうか?

美しいドレスをデザインしたのは、アカデミー賞を3度受賞した経歴を持つイギリス出身のサンディ・パウエル氏。そしてその製作には、ひとりの日本人女性アーティストが携わっていました。

彼女の名前は宮本遥香さん。イギリス・ロンドンを拠点に活動しています。ルーミーでは先日、映画のプロモーションのために一時帰国した宮本さんにお話をうかがいました。

150422Miyamoto-02

──まずは自己紹介をお願いします。

広島出身です。27歳で、ロンドンに7年くらい住んでいます。おととし結婚して、今は仕事をしています。

──アーティストやコスチュームメーカーとして幅広く活動されているそうですが、幼い頃のテディベア作りがものづくりを始めたきっかけだったそうですね。10代の頃から国際的なテディベアのコンクールで優勝するほどの腕前だったとか。

何でも作っているんですけど、テディベアは小さい頃から好きでした。

──ロンドンにはどのような経緯で行くことになったのですか?

アートが勉強したくて、大学では留学したかったんです。1度は日本の大学に進んだんですけど、やっぱり海外に行きたいという思いがあって決めました。最初は1年の予定でしたが、すごく楽しかったので日本の大学は辞めちゃいました。

──ロンドンの大学では何を勉強したのですか?

最初は靴の勉強をしたんですけど、内容がビジネス寄りで、コンピューターで靴のデザインをして、それを大量生産するといった感じの実用的なコースでした。私は作る方がやりたかったので、それでは面白くないと思って、テキスタイルを勉強しました。

150422Miyamoto-09

──映画のお仕事を始めたきっかけは?

大学生の頃にいろんな仕事をさせていただいていたんです。その中でフィリップス社と提携したプロジェクトの話があって、「靴をカスタマイズできる子を探しているんだけど、ブラック・アイド・ピーズの世界ツアーの衣装に興味ある?」って言われて、「あ、やります!」って(笑)。それから衣装関係の仕事が増えていきました。

──最初から、すごい大物ですね。

他にもレディー・ガガの衣装(※空飛ぶ衣装ボランティスの装置製作)なども手掛けました。映画の仕事のきっかけは、私の大家さんが映画関係の仕事をされている方だったんです。その知り合いの日本人でワカナさんというヘアとメイクアップの仕事をされている方に会って、『シンデレラ』のヘアメイクも担当されているんですが、彼女の紹介で仕事をいただけるようになりました。それ以来、出たり入ったりしています。

──2012年公開の『レ・ミゼラブル』にも参加されたそうですね。

脇役の担当だったのですが、娼婦とかの衣装の飾りつけなどをさせていただきました。

──『シンデレラ』の実写版に参加した経緯は?

サンディ(・パウエル、衣装デザイナー)のアシスタントから、「ちょっとミーティングに来てくれる?」って電話がかかってきたんです。サンディとは会ったことがなかったんですけど、突然電話がかかってきました。

──突然の大物からの連絡に緊張しましたか?

それよりも「ミーティングにポートフォリオを持ってきてほしい」と言われて、作っていなかったので、そっちの方が大変でした(笑)。だからあまり(プレッシャーは)考えなかったです。今になって日本にまで呼んでいただいて…こうなるとは全然想像していなかったです。

150422Miyamoto-03

──今作における宮本さんの役割は?

サンディのデザインをもとに衣装を作る仕事です。シンデレラのドレスの胸元の蝶々を担当したのですが、実は全部ひとつひとつ形が違うんです。ドレスは1着に見えますが、同じものを8着くらい作ったんですよ。飾る蝶々も全く同じにしないといけないので、それは大変でした。10匹ずつ一緒に作ったりしていました。

──世界中で愛される名作『シンデレラ』の実写版ということで、大きな注目を集める作品ですが、オファーを受けた時はどう思いましたか?

私はあまりテレビを観させてもらえなかったので、申し訳ないんですけど『シンデレラ』も今回のお話を受けるまで観たことがなかったんです。でも、この仕事は楽しかったです。蝶々がどういう風に動くか考えたり、どのような布や色を使ったらいいのか考えたりするのはすごく楽しくて、それを仕事にできるのは本当に幸せなことだと思います。

──蝶々はどのような素材で作られているんですか?

衣装に使われている生地と同じもので作りました。ひとつずつ全部違うんですけど、衣装と同じ生地を違う色に染めたりして使いました。サンディから参考にいろんな本物の蝶々の写真をいただいて、「軽い感じで作ってほしい」と言われました。

150422Miyamoto-04

──子どもの頃からものづくりをしてきて影響されたことや得たものの中で、今作で役に立ったことはありましたか?

私は田舎で育ったので、実際にふ化して、幼虫になって、蝶々になっていくまでの様子を見ていたんです。それに小さい頃は蝶々と一緒に遊んでいたので、そういった記憶はとても参考になりました。

──サンディさんはアカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞された方ですが、一緒に仕事をして印象に残っていることは?

とても優しい人ですが、妥協はしたくないタイプなので、これをやると決めたら折れてくれないんですよ(笑)。(ヘレナ・ボナム=カーターが演じる)フェアリー・ゴッドマザーの襟や羽の部分も担当したんですけど、「1番外側のアウトラインを見えないようにしてほしい」って言われて…「透けていて何もない感じにしてほしい」って言われたんですけど、「無理でしょ!?」って(笑)。

でも素敵なアイデアなので、それをどうやって実現しようかいろいろ試して何とか形にしました。スクリーンで観たらきれいに映っていたので、良かったなと安心しました。

150422Miyamoto-10

──他の人のデザインを望み通りに作るというコスチュームメーカーのお仕事は、ご自身のデザインを形にするのとはまた違った難しさがあるのではないでしょうか?

そうですね、できるだけサンディの思ったものに近いように作ろうと思いました。それは難しいと言えば難しいです。自分で決められないので、彼女が思ったものを作るように努力しました。

──初めてスクリーンでご自身が手掛けたドレスを観た時はどう思いましたか?

あくまでもサンディの作品だと思っているので、自分の作品とは思っていないんです。自分が作った蝶々をスクリーンで観た時は、すごく変な感じでした(笑)。でも、携われたのはすごく幸せなことだと思います。日本にまで呼んでいただいて、今ちょっと変な気分なんです(笑)

──今作で他に手掛けた衣装はありますか?

王子様のジャケットの金の装飾などです。

150422Miyamoto-06

兵隊さんの衣装の装飾は、参考に写真をもらって「こういう感じで作ってほしい」と言われて。すごい勢いで全員分作りました(笑)

150422Miyamoto-05

──宮本さんから観た『シンデレラ』の見どころは?

1番の見どころは変身シーンですね。すごくきれいでした。ドレスが水のように、空気のように動いているのはとても素敵でした。

──ところで長年ロンドンで暮らしているとのことですが、1番好きな場所はどこですか?

私はForest Hillというところに住んでいて、ロンドン市内なんですけど、本当にForest(森)とHill(丘)があるんです。30〜40分歩いてまわれるような森があるんですよ。

丘の上には「Honor Oak」っていう、クイーン・エリザベスがちょっとそこで休憩をしたということで「Honor(名誉)」だというオークの木があって、そこはオススメです。その丘の上からはロンドンの街がすごくきれいに見えますよ。私は田舎が好きなので、緑がないとだめなんです。

150422Miyamoto-07

──こちらの黒い鳥は宮本さんの作品ですか?

この子はいつも連れて歩いています(笑)。レザーと廃棄されていたスポンジやゴミ袋で作りました。映画の仕事をしていると、大量のゴミが廃棄されるんです。私はゴミを集めるのが好きで、廃棄されたものから絶滅した動物を作っています。

1回捨てられたものに命を与えるというコンセプトの作品で、これはドードー(※1600年代に絶滅したとされる鳥)です。今はこのコンセプトで作品を作りためていて、十分にたまったら発表したいと思っています。

──現在27歳で既に幅広く活躍されていますが、10年後のご自身を想像すると?

10年後は子どもがいたらいいな。あとはアーティストとして仕事ができるようになっていたらいいなと思います。映画の仕事では“メーカー”なので、デザイナーの思うものを作りたいと思います。

でも、自分でデザイナーを目指す気は全くないんです。私はものを作る方が好きで、作れなくなったら嫌だなと思っています。

150422Miyamoto-08

帰り際、「名前はじゅんこといいます(笑)」とお手製のテディベアを見せてくれた宮本さん。チャーミングな笑顔と柔らかい語り口で、大好きなものづくりについて幸せそうに話す姿が印象的でした。

http://youtu.be/-ofg6rx2Zsw

シンデレラ
監督:ケネス・ブラナー
脚本:クリス・ワイツ
キャスト:リリー・ジェームズ、ケイト・ブランシェット、リチャード・マッデン、ステラン・スカルスガルド、ソフィー・マクシェラ、ホリデイ・グレインジャー、デレク・ジャコビ、ヘレナ・ボナム=カーター
衣裳デザイン:サンディ・パウエル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©2015 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
©Walt Disney Studios
4月25日(土)全国公開

シンデレラ』[ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン]

Haruka Miyamoto photographed by Kenta Terunuma

この記事を気にいったらいいね!しよう

ROOMIE(ルーミー)の最新情報をお届けします。

あわせて読みたい

powered by cxense

Ranking