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○ある少女との出会いと別れ

女の子が死ぬ話」というタイトルは、コミックを手に取った人をちょっと驚かせます。表紙の美少女の髪が白いことも彼女の薄幸を想像させます。「きれいに死のう――」という帯のキャッチコピーも示唆しているのは、美しい彼女の死です。そして、その直感が正しかったことは読中に分かります。

主人公の女の子は体育会系ながら高校デビューでキャラ変更をたくらんでいたところ、ひょんなことから超美少女と友達になります。そして、彼女の幼なじみであるカッコいい男の子とも友達になります。

高校一年生的にいろいろ遊んで楽しく過ごしていたところ、美少女の彼女はいきなり入院、連絡もつかなくなります。彼女は本当に、薄幸の美少女だったのです。

そして、彼女は本当に死んでしまいます。「女の子が死ぬ話」というタイトルのとおりに。主人公の女の子にとって、わずか半年のつきあいだった美少女の姿は、永遠に焼き付きます。

結婚しても、子どもができても、15歳で死んでしまった美少女の年齢の2倍、人生を生きたとしても、ずっと。

こうして要約してしまうと、ありきたりのストーリーに思えるお話ですが、作者はていねいにコミックを作り上げており、一気に読ませます。途中で手を止めるのがもったいないと思えるほどの強い力で最後のページまで私たちを連れていく一冊になっています。



○誰かとの時間が、ずっと支えになる

誰かと過ごした短い時間が、その後の長い人生において記憶として残り、支えになる、ということは誰にでも何度かあるのではないでしょうか。

二度と会うことのないその人の存在を、いつでも思い出すことができ、またそれが自分に元気をくれたり自分の背中を押してくれたりするような。

それは、中学時代にクラスメイトと日だまりで話し合った楽しい時間の記憶であったり、初めての彼氏と楽しく過ごした記憶と辛い別れの記憶のセットであったりします。若いうちに経験した記憶は人それぞれでしょうが、人は何かの記憶にしがみついたり美化することによって、生きていく力を得るのかもしれません。

ストーリーに吸い寄せられるように世界に入り込み、そのあと自分の記憶に思いを飛ばす。マンガの力を思い知らされる一冊です。



○今、注目したい漫画家のひとり

作者の柳本光晴氏は、今注目したい漫画家のひとりです。超絶に絵がうまい、というタイプではありませんが、話づくりは超絶にうまく、ぐいぐい読ませるタイプの漫画家です。

短編集の「きっと可愛い女の子だから」も、素敵な作品集で、あわせて読めば確実に柳本光晴ファンになることでしょう。

こちらは、5つのエピソードで、それぞれ女の子とその恋愛模様が綴られますが、帯にある「脇役みたいな人生でも恋をする」とあるように、王道ヒロインではなく脇役的キャラクターの恋愛模様がていねいに描かれます。

個人的には5分の4の確率でヒロインの女の子がメガネをかけているのが押しですが(表紙もそう)、これも「普通の平凡な女の子」の象徴的アイテムといえるかもしれません。

必ずしも恋愛が成就しないことも、普通の恋愛を描いているなあと感じさせますし、それが嫌な読後感にならず、話をうまくまとめているのはさすがです。

現在連載中の「」は1巻発売中ですが、こちらはカミソリを想像させるようなヒリヒリした展開で読ませます。大長編になるタイプではありませんが、最後まで読み切りたいと思わせる作品です。

もし、「まだ柳本光晴は知らなかった」というマンガ好きには1冊でいいので手に取ってみて欲しいと思います。

自信を持って、オススメします。

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