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渋谷ヒカリエ8階の「d47 MUSEUM」は、他とは違うすこし変わった展示スペースです。企画テーマは、数ヶ月ごとに入れ替わりますが、一貫しているのは「47の日本の個性を、47の常設展示台を使って紹介する」ということ。

現在は「NIPPONの47人 2015 GRAPHIC DESIGN」が、5月24日(日)まで開催しています。

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日本の都道府県の数は47。その各地域で実際に生活していて、その地に事務所を構えているグラフィックデザイナーを各都道府県から1人ずつ選出し、計47人の作品を展示しながら、デザインの地域性にも注目しようという企画です。

「d47 MUSEUM」の特長は、等間隔に設置された47台の「90cm幅のテーブル」にあります。

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通常の展示であれば、扱うモノのボリュームによって使うスペースも異なります。ところが、「d47 MUSEUM」ではそれぞれの都道府県に与えられた展示スペースは、北海道も、東京も、沖縄も、みんな同じ「90cm幅のテーブル」だけ。

同じ条件で展示されるからこそ、見る側も先入観なしに、それぞれの地域を比較しながら楽しむことができるのです。

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これまで「デザイン」というのは、都市圏から生まれるもの思われていましたが、多様化している今の日本では、その価値観は変わりつつあります。

風土や環境が「文化」をつくるように、その土地ならではの「個性」や「地域性」が、デザインの世界でも注目されています。デザインの力を使うことで、地域に人が集まりはじめているのです。

地域における、デザインの役目とは?

「d47 MUSEUM」の運営を担当されている、黒江美穂さんはこのように話してくれました。

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―“地域での暮らし”を反映させたデザインとは、どういうものですか?

例に出すと、山形県に住むアカオニデザインの小板橋基希さんがデザインした「オーロラコーヒー」も、そのひとつだと思います。

コーヒー豆は、種類と焙煎方法によってたくさんの種類に分けられます。山形に店舗を構える「オーロラコーヒー」は、東京の大型店のような大量生産ではなく、丁寧に一袋ずつ、こだわりながら作っています。

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デザイナーの小板橋さんは、その店の価値を伝える手段として、すべてのパッケージを同じデザインにして印刷コストを下げながら、中身の違いを「マーカー」で色づけする方法を選びました。

一袋ずつにマーカーで色付けするので、手間はかかりますが、手作り感は相手にダイレクトに伝わります。その土地に住んでいて、肌感覚で物流の量も把握しているからこそ、こういったデザインが生まれるんだと思います。

―シンプルだけど、惹かれるデザインですね。

その地域にあったデザインが「個性」となって、都市部の人たちをハッとさせるデザインになるんだと思います。結果的に「山形にオシャレな焙煎所がある」といった地域のアピールにもつながりますしね。

山梨県に住む、BEEK DESIGNの土屋誠さんも素敵なデザイナーさんです。彼が面白いのは、山梨県に住みはじめた当初、仕事をもらうために営業をしたのではなく、山梨の人や暮らしを伝える『BEEK』という雑誌を完全に自己資金でつくりあげてしまったことです。

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それをデザインに興味ありそうな人が集まる場所に置くことで、地域の店、人、コミュニティーをつなげるような役目になっていくんです。『BEEK』で紹介されれば反響もあるわけで、そこから生まれた繋がりから「デザインのことなら土屋さんに相談しよう」と、いまではデザインの域を超えて、県内外で山梨の魅力を発信するイベントも企画しているそうです。

―山梨が好きなのが、すごく伝わってきます。

そうなんです。ご自身で「やまなしのアートディレクター」と名乗るぐらい、熱意のある方なんですが、その原動力も「知られてないから、知ってほしい」というシンプルな理由だったりするんですよね。

こういったことができるのも、“地域での暮らし”があるからこそだと思います。

―今回選ばれた47人は、どのようにして決まったんですか?

ここの企画・運営をしている「D&DEPARTMENT」は、デザイン目線で辿る観光ガイド『d design travel』もつくっています。これまでに出版した地域を中心に、編集部たちの中にかなりの情報ストックがあります。まだの地域でも、周辺の人に情報を聞いたり、紹介してもらったりしながらリサーチしています。

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東京:長嶋りかこ

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福岡:サダマツシンジ

それでも見つからない場合は、SNSを使って情報を呼びかけたり、これまでの「d47 MUSEUM 」の出展者さんに相談することもあります。基本は「地元の人に聞く」というスタンスで調べ、あとは雑誌やネットから探したりします。

スタッフのリサーチをもとに、最終的にディレクターのナガオカケンメイが、各デザイナーのこれまでに制作した成果物や、その人の持っている個性などを複合的に判断して選んでいます。

―47都道府県の47人、なにか共通するものってありましたか?

うーん、共通性ですか? あるとしたら、みなさん“すごくいい人”だった(笑)。

何十年も前だったら、こういった各地のデザイナーを集めて展示する企画って、実現してなかったと思うんです。というのも、デザインそのものがもっと特別で、敷居が高かった時代では、デザイナー同士の対立や、地域の対立があってもおかしくないですからね。

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北海道:佐々木信

時代が変わって、デザイナーの意識も変化して、地方がどうとか、都市部がどうとか、そういうことを気にしなくなったのかもしれません。

―「NIPPONの47人」の楽しみ方があれば教えてください。

デザイン一点一点を、好き嫌いを感じながら見てまわるのも面白いと思いますし、細部まで見ていただければ、日本のグラフィックデザインの「今」を感じることもできると思います。

また、47都道府県を俯瞰でながめることで、もう東京の価値観だけでデザインを語る時代じゃないんだなと、肌で感じてもらえると思います。

―まずは、自分の出身県が気になりますよね。

みなさん、そうおっしゃいます。愛情の裏返しなのか、自分の出身県のテーブルでは、けっこう辛口になるみたいです(笑)。

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―本日は、ありがとうございました。

ありがとうございました。


今回展示された一部のプロダクトは、隣接のショップで購入することも可能です。

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また、「d47 MUSEUM」が企画する「NIPPONの47人」シリーズは、企画の度に書籍にまとめられて発売されています。気になる方は公式サイト、もしくは「d47 MUSEUM」にて、直接お問い合わせください。

日本のグラフィックデザインの「今」を知ることができる貴重なチャンスです。みなさんもぜひお見逃しなく。

『NIPPONの47人 2015 GRAPHIC DESIGN』

日時  2015年4月3日(金)~5月24日(日)
    11:00~20:00(入場は19:30まで)
場所  d47 MUSEUM 渋谷ヒカリエ8階(地図を見る)
入場料 500円(学生400円 小学生以下無料)

Photographed by Takashi Sasaki

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