今年度の第18回メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選ばれた「金魚解放運動」は、生物学をバックグラウンドにもちながらアーティストとして活動している石橋友也さんによるアートプロジェクトです。

金魚の祖先はフナであり、人間が千年以上もかけて、好みの色や形の個体を選抜して品種改良することによって、今の金魚が作り出されました。

ひらひらしたヒレや、赤くてキラキラした色を持つ金魚は、素早く泳ぐ能力を失っていたり、目立つ色で天敵に簡単に発見されてしまったりするために、もはや自然界では生きていけないと言われています。

「金魚解放運動」は、そんな「かわいそう」な金魚たちを、「逆」品種改良をすることによって再び野生のフナの姿に戻し、「解放」しよう!!という名目のプロジェクトです。

大学で生物学を学んだ石橋さんは、実際に生物学的な実験として金魚の「逆」品種改良を行っています。

金魚から野生のフナの姿に戻してしまうことが目的の「逆」品種改良は、遠い血縁の品種同士を交配していく雑種化と、フナらしい特徴を持った個体を選抜する手法で可能になるそうです。

金魚を可愛いという人がいる。また金魚を奇妙だという人もいる。金魚解放運動の目的は金魚という人工物をフナに改造することによって彼らの「野性」を取り戻すことである。

金魚はフナに出発し、1700年間の品種改良を経て今日の姿を獲得した人工生命体である。彼らは完全に愛玩を目的としてデザインされており、その姿形から彼らの多くは自然環境下で生き抜く力を持たない。

そこで彼らの「野性」を取り戻すべく、金魚に逆品種改良を施しフナの姿へと逆行させ、人間の手から解放することを試みる。金魚に刻まれた美意識と欲望を反転させるこのバイオ政治活動は、我々を再び、かつて繰り広げられた人類と金魚との愛憎劇へと誘うであろう。

(石橋友也さんによる「金魚解放運動」コンセプトより)

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さて、金魚たちは本当に「かわいそう」なのでしょうか?

天敵がたくさんいる自然界で暮らしている野生のフナたちは、毎日必死に自力でエサを探して生きて行かなくてはなりませんが、人間に飼われている金魚は、毎日エサをもらったり世話をしてもらえたりするのですから、もしかして、「かわいそう」ではないのかもしれません。

すこし見方を変えると、金魚は人間を利用して生きている、という風にも考えられます。

あるいは、金魚にとっては、自然界の天敵も、野生の川も、人間の世界とすこしも変わらないのかもしれません。そうだとすれば、本当にフナに戻すことが金魚にとっての「解放」なのでしょうか?

「金魚解放運動」は、そんな風に「自然」や「人間」や「生き物」について色々な見方を想像させ、考えさせてくれるアートプロジェクトなのです。

金魚解放運動

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