ラブソングといえば、どんな曲を思い浮かべますか?
もしかしたら「あの人を好きだったときはこの曲、今の恋愛ではこの曲」なんてこともあるかもしれませんね。
歌手として、女優として活躍する原田知世さんが、この3月に洋楽ラブソングのカバーアルバム『恋愛小説』をリリースしました。1曲ごとに異なる主人公を、異なる脚本で演じるように歌ったという同作、そしてラブソングについて、原田さんにインタビューをしてきました。
■今回の新作『恋愛小説』は洋楽ラブソングのカバーアルバムとなりましたが、本作を作るきっかけは何だったのでしょうか?
去年ひさしぶりに『noon moon』というオリジナルアルバムをリリースしたのですが、とてもよいメンバーと出会えて、そのメンバーとツアーもしたんです。そのツアーをユニバーサル・ミュージックのディレクターの斉藤さんがご覧になっていて、「女優と歌手両方を感じられるような作品にしたい」と、ラブソングを集めたカバーアルバムを作ってはどうかとご提案をいただいたんです。去年はとても充実した年にできたので、あいだをあけずにアルバムを作りたいと思っていたこともあり、是非と思いました。
■ラブソングというテーマについてはどう思われましたか?
素敵だなと思いました。『noon moon』もそうでしたが、大人の方々がじっくりと聴いていただけるような作品にしたいなと思いました。
■数々の名曲が選ばれていますが、選曲のポイントを教えてください
はじめにディレクターの斉藤さんからいくつか候補をご提案いただいたのですが、そこには洋楽だけでなく邦楽も含めて素敵な曲がたくさん入っていたんです。そのリストを見ながら、プロデューサーの伊藤ゴローさんと相談して絞り込んでいきました。絞り込んでいくうちに自然と「今回は洋楽で」ということになりました。私は自分が歌ったときにどんな曲になるのかを想像して選びましたね。自分が歌ったときをイメージしやすい曲、そして歌ってみたいという曲たちです。
■楽曲を選ぶにあたり、やはり聴きながら選ぶのでしょうか? 中にはどれがオリジナルか忘れられてしまっているくらいカバーの多いスタンダードナンバーもありますが。
今回私はYouTubeをチェックして、オリジナル以外のカバーバージョンもたくさん聴きました。プロだけでなくアマチュアの方も色んなカバーをされていて、原曲に忠実に歌う人や、メロディーすらも変えているようなものもあったりして、関連動画をたどってずっと観てましたね。この人のこの部分が良いな~なんて思ったりしながら。
■前回のカバーアルバムである『Summer breeze』と本作では制作時の気分は違いましたか?
全然違いました。あれから10数年経って、伊藤ゴローさんと出会って、ツアーもやりましたし、あとは高橋幸宏さんたちとpupaというバンドにも参加したりと、音楽的な経験をたくさん詰めたのが良かったです。
そのおかげで、歌うことに対してもっと自然体に取り組めるようになって、今のほうがリラックスして歌えているし、歌声でも低音の部分がよく出るようになったり、昔は出せなかったニュアンスが出せるようになりましたね。
■タイトルが『恋愛小説』ですが、恋愛小説は読みますか?
それが考えてみると意外と読んでないんですよ。ラブソングは聴くんですけどね。
ラブソングはより直接的に心に響く感じがします。例えば自分に好きな人がいるときとか、その曲が勝手に恋愛のテーマ曲になったりとかしますよね。そしてその人を好きだったときに大切だった曲が、10年経って聴いてみると何も心が震えないなんてことも(笑)
でも逆に、昔は何も感じられなかったラブソングが大人になって「こんな深いことを言っていたのか!」と驚くこともありますよね。この『恋愛小説』も長く聴いてもらえるアルバムになっていれば良いなと思っています。
■最近、ザーズというフランスの歌手が、パリをテーマにした曲を集めたカバーアルバムをリリースしていたのですが、原田さんが都市や国をテーマにカバーアルバム、オリジナルアルバムを作るとしたら、どこをテーマにしますか?
考えてみたことはなかったですが、おそらく東京を選ぶと思います。自分が暮らす街だし、色んな姿がある街ですので。
■東京のほかに原田さんが注目している地域はありますか?
お仕事で全国を回ってみて、しばらく東京で過ごしたあとに田舎の大切さを感じて地元に戻って発信者になっている方が多いという印象を持っています。
私は伊藤ゴローさんと2人で「on-doc. (オンドク) 」という、朗読と演奏のイベントをやっているのですが、バンドでのツアーとよりもフットワーク軽く色々な場所に行けるんです。それで何度か行っているのは唐津ですね。「洋々閣」という古くて趣のある素敵な旅館があるんです。あとは高知です。「蛸蔵(たこぐら)」という蔵をリノベーションして映画を上映したり、お芝居をやったり、ライブをやったりとアートスペースにしているしているところがあるんですけど、素敵なカフェもすごく多いんです。
■このroomieでは昨年「お片づけがはかどるBGM」をテーマとしたコンピレーションを作ったのですが、原田さんにとってそんな曲やアルバムはありますか?
私はお片づけをするときにはFMラジオをかけます。予想しない曲に出会えたり、お話でも「あっ、こういうイベントがやっているんだ」とか「(ゲストの方が)あっ、この人面白い人だったんだな」とか知られたりして世界が広がる感じがしますので。
■その他ライフスタイルやお部屋に付いてのこだわりはありますか?
野菜のスムージーを朝起きて作って飲みます。そこから1日が始まりますね。
お部屋はシンプルで明るい部屋が好きです。それと窓が大きい、光がちゃんと入って、特に朝日が入る部屋がいいですね。自分では温かい雰囲気を作るようにしています。家具は北欧系のものが多くて、長く過ごす場所なので落ち着けるようにしようと思っています。それと夜はお酒を飲んだりもしますので、間接照明をどうしようか今ちょうど悩んでいるところです。まだ発展中なんです(笑)キャンドルが好きなので、電気をつけずにキャンドルだけで過ごす日もあったりしますよ。
■最後に本作『恋愛小説』をどのように聴いてほしいか教えてください
『恋愛小説』は10個のラブソングが集まった、短編小説集のようなアルバムです。サウンドとしても心地よいアレンジになっているので、みなさんの生活に寄り添うような作品として楽しんでいただければ幸せです。それと今回はCDのブックレットに歌詞の和訳も載せていますので、じっくり読んでいただきたいですね。
恋愛中の方はより思いが深まったり、恋愛していないという方には自分が誰かを好きだったときの気持ちが蘇るような、そんな作品になれば嬉しいなと思っています。
photographed by Kenta Terunuma
原田知世
あの物語の中で逢いましょう。短編小説の主人公を演じるように歌う、ラヴ・ソング・カヴァー・アルバム。