2月13日(金)から、2月22日(日)まで、香川県にて「さぬき映画祭」が開催されました。

映画祭のディレクターは、『踊る大捜査線 THE MOVIE』シリーズなどを手掛けた、香川県出身の本広克行監督。「映画、だけじゃない映画祭」をキャッチコピーに、映画上映はもちろん、「UDONツアー2015」などたくさんのプログラムが行われました。

過去のさぬき映画祭では、映画製作、脚本制作のワークショップを運営してきました。そのワークショップをきっかけに、いま、香川県を中心として話題となっている映画監督がいます。

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その監督は、香西志帆さん。なんと、香川県在住の「現役OL銀行員」でありながら、「映画監督」を務めているのです。

自主製作映画からキャリアをスタートし、2015年には夏菜さん主演の『恋とオンチの方程式』、篠原ともえさん主演の『猫と電車』が全国順次上映予定。

銀行員と映画監督の2足のわらじをこなす、と聞くだけで大変そうですが、なぜ両立ができるのか。想いの根源を伺いました。



「何か残したい」という思いから、脚本を書きはじめる

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――映画を撮りはじめたのはいつからですか?

2007年、さぬき映画祭の映像塾に参加したときからです。当時31歳でした。その翌年、大阪のシナリオセンターに通いました。



――映画を撮りたいという思いは、ずっと抱いていたんですか?

実はそんなことはないんです。

小学生のとき、江戸川乱歩を読んで、そのおもしろさに電流が流れるような衝撃を受けてから、物語を考えたり、書いたりするのが好きになりました。それで、大学卒業時に書く仕事として新聞記者を目指しましたが、選考に落選。いまの会社のリクルーターに、うちには社内報に携わるチャンスがあると聞き、入社しました。

社内報に携わることで、得るものはたくさんあったものの、企業内での部署移動はざら。29歳の時、このまま何も残らずに人生が終わってしまうのかなと思い、脚本を書きはじめたんです。



――脚本を書きはじめた、具体的なきっかけはなんだったんでしょうか?

社内報制作の中で、本広監督にインタビューをする機会がありました。「どうして映画監督になったんですか?」と聞くと、「すごく嫌なことがあって、現実逃避で映画を観るようになり、撮るようになった」って言うんです。

私も会社で落ち込むことがあり、『リトル・ミス・サンシャイン』という映画を観ました。その時、すごく元気をもらって、物語をもう一度書きたいと思ったんです。



――銀行員でありながら、映画監督である生活はどんなスケジュールなんでしょうか?

平日は、銀行での勤務を終えて19~20時に帰宅。22時に一度就寝し、2~3時に起床します。そこから脚本を書いたり、編集作業をして朝を迎え、そのまま銀行に出社しています。

休日も、金曜日に会社が終わってそのまま夜行バスで東京に行き、早朝に到着。友人の家でシャワーを浴び、打ち合わせや編集作業、徹夜して月曜日にまた出社するというスケジュールをこなしています。



こんな機会はもう二度とないかもしれない

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有給休暇を使って行う撮影期間中は、スケジュールがいっぱい。ほとんど眠る間もないそう。

――銀行員と映画監督の両立で、体力的に大変な毎日を過ごされていると思います。なぜ、そこまで取り組めるのでしょうか?

単純に「モノづくりが好き」という思いと、「次はないかもしれないチャンスを逃せない」という思いからです。

映画製作に取り組むとき、「こんな機会はもう二度とないかもしれない」って毎回考えるんですね。作品を撮るたびに、この作品は最後かもしれないって。モノづくりは期限があるように思うんです。

特に映画は肉体的にもハードなので、体力がないとできないですし、いつまでできるかなという不安が常について回っています。その思いに駆られ、ハードスケジュールもこなせるのだと思います。



――銀行員はやめて、映画監督一本で取り組もうと考えないのはなぜでしょうか? そちらのほうが、映画に時間を割くことができるのでは?

わたしがやりたいのは、映画に限らない、モノづくりです。いま、本業である銀行員の仕事でもモノづくりの仕事として、広報をさせて貰っています。

例えば、会社のイメージポスターの写真を私が撮影したり、付箋やボールペン、うちわなど、会社のグッズのデザインを制作したり。だから、銀行での仕事も「好き」というのが大きいですね。

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香西さんのイラストが描かれた百十四銀行のグッズ。

それに本業での経験が、映画制作に活きたり、その二つが組み合わさったりすることがあるんですよね。

はじめて映画を作ったとき、社内報制作の経験がすごく役立ちました。文章を書いたり、写真を撮ったり、アポ取ったり、プレゼンしたり。映画は総合芸術と呼ばれるだけあって、そのすべてが必要なもの。でも社内報制作をしていた経験があったからこそ、抵抗なくそれに取り組むことができました。



――銀行員としての経験が、作品内容に影響を与えたことはありますか?

2015年に全国順次公開予定の映画『猫と電車』では、夢より現実を優先し、市役所に努める姉と、夢を追いかけ、公園で寝泊まりしても絵を描き続けている妹の姉妹を描いています。

この鏡写しの両面性は、私の心の葛藤でもあって、銀行員ながら映画監督という立場だからこそ、その機微を繊細に描けたと思うんです。

ですから、銀行での仕事がマイナスになることはありません。



自分の「好き」をひとつに絞る必要はない

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――ルーミー読者には、「やりたいことがあっても、毎日忙しくてなかなか取り組めない人」が結構いると思います。そんな読者に、メッセージをいただけますか?

私は、今も昔も映画だけにこだわってきたわけではありません。物語を考えるのが好きで、小説を考えたり、マンガを考えたり、イラストを書いたり。私は結局作ることが好きなので、いまは映像をやっていますけど、今後は別の表現の仕方にも挑戦してみたいです。

職人のように、ひとつのことを追求する人もいますが、いろんなことに興味がある人も多いと思うんです。興味範囲が広いことに加えて、毎日すごく忙しい人は、何から手をつけていいか分からなくなってしまいがち。

でもそのとき、好きなことをひとつに絞る必要はないと私は思います。複数の好きなことを毎日ちょっとずつ、時々背伸びして取り組んでみる。すると、必ずいつか、その好き同士が結びついて化学変化を起こし、素敵なものを作り上げてくれるはずです。



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香川県で撮影された香西さんの映画『恋とオンチの方程式』、『猫と電車』は、2015年全国順次公開予定です。


恋とオンチの方程式』予告編


猫と電車』予告編

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