全国学校音楽コンクールの課題曲となった「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の作者アンジェラ・アキのテレビドキュメンタリーをもとに、中田永一が書き下ろしたベストセラー小説を映画化した『くちびるに歌を』。ルーミーでは公開を前に、キャストの渡辺大知さんにお話をうかがいました。
映画は主題歌でもあるアンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」に乗せてつづられる、孤独なピアニストと、誰にも言えない悩みを抱えた離島の生徒たちの物語。
舞台は、長崎県・五島列島の中学校。東京からやって来た、天才ピアニストと噂される臨時教員の柏木先生(新垣結衣)は、合唱部の顧問となり、コンクール出場を目指す部員に“15年後の自分”へ手紙を書く課題を出します。そこには、15歳の彼らが抱える、誰にも言えない悩みと秘密がつづられていました…。
「脚本を読んで、めちゃくちゃ素敵な作品だな、と思いました。登場人物の一人一人が魅力的で、生き生きとしていて。本を読んでいてもこんなにキラキラとしているのに、そこに命が吹き込まれるとしたら、すごくワクワクするな、と思ったんです」と語る渡辺さんは、劇中で合唱部に所属するサトルの自閉症の兄、アキオ役を演じました。
ロックバンド、黒猫チェルシーのフロントマンとして活躍する渡辺さんは、2009年に『色即ぜねれいしょん』(田口トモロヲ監督)で俳優デビュー。その後も数々の映画、CM、ドラマに出演しています。
作品ごとで、時に彼とは気づかないほど自然に変身してきた実力派は、今作でも自閉症の青年という難しい役を細やかに好演しました。撮影前は三木孝浩監督と一緒に、自身と同世代の自閉症の人たちが通う施設を訪問したそうです。
「みんなと一緒に仕事をしたり、飯を食ったり、遊んだりして、そこで気づいたんです。僕は自閉症の役をどう演じようかと考えていたんですけど、『あ、関係ないな』って。自閉症の役をやるんじゃなくて、僕はアキオというひとりの男を演じるんだ、と思いました」と渡辺さんは振り返ります。
「大切なのはアキオというひとりの人間が、映画の中でキラキラと輝くこと、生き生きとするということだけだな、と思ったんです。アキオってどういうやつだろう?毎日どんな景色を見ているんだろう?会話にはならないけど、弟が発した言葉に何を感じているんだろう?…そこに流れている空気感の方が、ずっと大事だなと思いました」
ちなみに渡辺さん自身は15歳の頃、「映画と音楽を両方やれれば最高だな」と考えていたのだとか。その言葉どおり、音楽や役者としての活動に加え、昨年は初の長編自主映画『モーターズ』で監督デビュー。黒猫チェルシーの楽曲「サニー」のミュージックビデオの監督も務めています。
「一時期役者を辞めて、バンドに専念しようかと考えたこともあったんです。でも、それこそ15歳の頃の自分に申し訳ないというか、『やりたいって言ってたじゃねえか?』って。自分にとっては両方やっていた方が、自分にしかできないことができるんじゃないかな、と思ってやっています」と話していました。
五島列島の雄大な自然を背景に描かれる、みずみずしく力強い人間ドラマ『くちびるに歌を』は2月28日より全国で公開予定。現役のティーンエイジャーはもちろん、かつて15歳だったすべての人に、子どもたちの真実の歌声が響きます。
出演:新垣結衣、 木村文乃、桐谷健太、恒松祐里、下田翔大、葵わかな、柴田杏花、山口まゆ、佐野勇斗、室井響、渡辺大知、眞島秀和、石田ひかり(特別出演)、木村多江 /小木茂光 /角替和枝 井川比佐志
監督:三木孝浩
脚本:持地佑季子、登米裕一
原作:中田永一(「くちびるに歌を」小学館刊)
主題歌:アンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」(EPICレコードジャパン)
製作:『くちびるに歌を』製作委員会
配給:アスミック・エース
公式サイト:kuchibiru.jp
©2015 『くちびるに歌を』製作委員会 ©2011 中田永一/小学館
2月28日(土)全国ロードショー
ポートレイト撮影: 照沼健太