「あ、この曲知ってる!」
そんなパリを代表する名曲をたくさん集めたカバーアルバム『PARIS~私のパリ~』が話題の、フランスを代表する女性シンガーZAZ(ザーズ)。
時代を超えた名曲をカバーした本作に込められた思いのほか、パリの魅力、そしてルーミー読者におすすめしたいパリのおすすめスポットについて、彼女にインタビューを行いました。
現在の社会情勢のなかで人々が忘れてはいけないことなど、はっきりとした物言いで話してくれるその姿は、まさしく「美しいパリの女性」そのものでした。
──パリをテーマとしたアルバムを作ろうと思ったきっかけや理由を教えてください。
ZAZ:みんなで話をしていて盛り上がったなかで出てきたアイデアなの。今までファンのみんなから「フランスの古い曲を歌うアルバムを作って欲しい」という要望があったんだけど、ジャズのアルバムを作りたいという自分の思いもあって、それを一緒にしちゃったのよ。
数々の名曲をカバーしたアルバムだけど、アレンジを本当に自由にすることができたから、まるでオリジナルアルバムかのように作れたわ。このアルバムは自分にとってのご褒美みたいな作品だと思う。
──たくさんの名曲が収められていますが選曲のポイントはありますか?
ZAZ:ひとつのポイントとしては歌詞が昔の曲でありながら現代社会にピッタリな曲。例えば「パリジェンヌ」という曲はまさに社会への風刺になっている。マリー=ポール・ベルという歌手はレズビアンで、当時は今ほど同性愛を前面に出すことはなかった時代だったけど、それをハッキリと言った人なの。社会の型や流行にハマらないと阻害されてしまうということをうまく語っている曲で、とても今フレッシュだと思ったわ。
そして「いつものパリ」というのは占領下のフランスで作られた歌。現代もあまり平和とはいえない時代だけれど、自由や生きる歓び情熱を忘れてはいけないという曲だと思うわ。この曲は、恐怖で人々を支配しようとする力に負けてしまってはいけない、あきらめてはいけない、ということを教えてくれる。
…うん、恐怖という罠に人々はハマってしまってはいけないと思う。表現の自由、そしてお互いに対して寛容であることを、私たちは大事にしないといけないと思う。
──パリをテーマとしながら、ジャズを中心にさまざまなジャンルを横断するアレンジを施した作品だと思います。ジャズはあなたにとってどんな音楽ですか?
ZAZ:エレクトロからジャズ、フラメンコ、ファンク、ソウル、アフロ、キューバ音楽などあらゆる種類の音楽を私は聴くけど、そのなかでもジャズとかスウィングというジャンルは自分に自由をくれる音楽だと思っているの。
──大物プロデューサーであるクインシー・ジョーンズとの仕事はいかがでしたか?
ZAZ:実はセカンドアルバムのときにも「アレンジは誰にしてもらう?」ってスタッフに聞かれて「クインシー・ジョーンズ!」って私は答えていたの。そのときは鼻で笑われて誰も相手にしてくれなかったんだけど、今回はジャズだし、クインシー・ジョーンズはパリのバークレー音楽院でも長く働いていたからピッタリだと思ってお願いしたいと思ったの。
また鼻で笑われたんだけど「とにかくトライして!」ってお願いしたの。みんなからは「絶対ありえないから」と言われたんだけど、あっという間にクインシー・ジョーンズのスタッフから「他にたくさん進まないプロジェクトがあるのに、本人からOKが出ちゃいました。私たちも驚いています」と連絡が来たの。そして彼がパリに来てくれて…本当に最高だったわ。
──日本ではフランスの音楽といえばダフトパンクやフェニックスなどが有名ですが、フランスではどんな音楽が人気なのでしょうか?
ZAZ:みなさんが知っているフランスのアーティストというと、デヴィッド・ゲッタなど英語の曲を作っている人たちだと思うけど、フランスで人気があるのはフランス語で歌われている曲が多いかな?
──パリという街の魅力を教えてください。
ZAZ:フランスらしいアートの側面のほか、長い歴史のなかで色んな建築様式が混ざり合いながらも調和しているのもパリの魅力ね。いろんなところを旅するようになって、パリに帰ってくるたびに、タクシーから街を眺めてあらためて「素敵だな」と思ったりすることが増えたかな。街灯やセーヌ川、石畳、美しい女性たち…。
もちろん他の国には他の国の魅力があるけどね。たとえば日本に来ると、街並みだけじゃなく、文化や規範も何もかもがパリと違うから、本当に「異国に来た」と思えるわ。
──ルーミー読者におすすめしたいパリのスポットを教えてください。
ZAZ:エッフェル塔とか凱旋門とかルーブル美術館とか、有名なところもあると思うけど、個人的には「20区」が気に入っているわ。「私の心のパリ」という曲でも歌ってるメニルモンタンとか、オベルカンフ通り、サン・マルタン運河とか、カフェとか小さな店がたくさんあって活き活きとしていて庶民的なベルヴィル地区があるの。アフリカ料理やタイ料理、そしてもちろん美味しいフランス料理もあって、世界中のいろんな国がミックスされている場所。ぜひ遊びに来てほしいな。
ZAZ(ザーズ)
PARIS ~私のパリ~
クインシー・ジョーンズがプロデュースを手掛けた、ZAZのためのシャンソン・トリビュート決定盤。