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ルーミー編集部でアルバイトをする秋山優。22歳の射手座。来年の4月からは某出版社へ入社が決まっているため、ルーミーでバイトをするのもあと3ヶ月ほどである。

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ここだけの話、秋山はルーミーを離れることが少しだけ寂しかった。編集部の人たちは優しいし、ウェブメディアの仕事は思った以上に楽しかった。それに、なんといっても…。

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彼女の存在である。

彼女の名前はミドリ。秋山が働くルーミーの兄弟メディア「タブロイド」で働く女性編集者である。

秋山は入社早々、彼女に1度だけ怒られたことがあった。理由はルーミー編集部が使った会議室の片付けを秋山が怠ったからだ。もちろんそれらを片付けるのは秋山の仕事のひとつだった。

他の社員たちはそれほど気にしていなかったが、ミドリだけは違った。

「あなたは怒られるべきなの」

秋山はその言葉の意味をうまく理解できないまま、小さな会議室でミドリの話を30分近く聞き続けた。そして彼女が延々と説教を続けた結果、秋山はミドリのことが好きになっていたのだ。

なぜそのタイミングかと言われても秋山には説明ができない。それどころか、秋山はミドリのどこが好きなのかもよく分からなかった。

でも、好きという気持ちだけは間違いないのだ。

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ミドリは美人でスタイルもいい。でも、だからといって秋山は見た目で人を好きになる性格ではない。

「見た目で女性を選んだときの虚しさは、クリスチャン・ラッセンの絵画を家で毎日眺めている感覚に近い」

彼は叔父の言ったその言葉をいまでも覚えているのだ。

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「ミドリさん、今年のクリスマスは何か予定あるのかな…」

気がつくといつもミドリを目で追ってしまう秋山。ミドリがそんな秋山の視線に気がつく。

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「なに見てんの?」
「はっ!すみません!」
「秋山、ちょっと来い」
「はい!」

恐る恐るミドリに近づく秋山。いくら斜め前の席とはいえ、仕事中にチラチラ見られてはいい気分はしないものだ。秋山はすでに反省をしていた。

しかし、ミドリの口からは意外な言葉が出てきた。

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「あんた、このサイト知ってる?」

ミドリのパソコン画面には「シンデレラ~鼻の舞踏会~」というウェブページが開かれていた。

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「なんですかコレ?」
「説明はあと。このカメラを見て」
「あ、はい…」

秋山はミドリに言われるままにパソコンのカメラを見た。ミドリは画面のガイドに合わせて秋山の顔を撮影した。すると、画面には秋山の顔がはめられた「秋山王子」が姿を現した。

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「はは、王子様だって! かわいい!」
「自分でいうな」
「すみません…」

続きをクリックするミドリ。すると、今度はミドリの顔をしたお姫様も登場した。

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「ミドリさんも? か、かわいい…」
「なんか言った?」
「な、なんでもないです! ところで何ですか、このサイト?」
「鼻の舞踏会よ。私がお姫様で、あんたが王子様」
「お姫様?」
「文句ある?」
「ないです!」

「鼻の舞踏会」の意味がよく分からない秋山だったが、そのまま次をクリックしてみた。すると…。

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2人の顔がはめられた王子様とお姫様が突然踊りだしたのだ。隣ではミドリが無邪気に笑っていた。

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(ミドリさん、やっぱりかわいいな…)

楽しそうに笑うミドリを横目に、秋山はなぜこんなにも彼女に惹かれるのかを考えていた。何か特別な理由があるに違いない。ここまで引きつけられる特別な何かが…。

秋山は過去の記憶をたどってみた。

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エレベーターで一緒になったとき、

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廊下ですれ違ったとき、

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パソコン操作を教えてもらったとき、

どれも秋山の印象に強く残っている瞬間である。

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秋山は考えていくうちに、これらの瞬間に共通する「あること」に気がついた。それは、秋山がミドリに近づいたときにいつも漂ってくる…

彼女の「香り」だった。

クールな印象のミドリに近づくと、いつも華やかでフローラルな香りがほのかに漂ってくるのだった。

ミドリのピリッとした性格に、優しい花の香り。それは、甘いあんこの奥に感じるかすかな塩気のように、絶妙な組み合わせで秋山の心をとらえていたのだった。

「ミドリさんって、素敵な香りがしますね」
「何よ、突然」
「何か花のような香りが…」
「鼻?」
「いや、ノーズじゃなくてフラワーの」
「花? ああ、たぶん『ぷにぷにボールド』のせいね」
「ぷにぷにボールド?」
「ぷにぷにボールド」

と、突然うしろからミドリの名前を呼ぶ声が聞こえた。

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「ごめん、編集会議の時間だ」
「あ、ちょっと!」

ミドリはそのまま会議室へ行ってしまった。秋山は仕方なく自分の席に戻ると、ミドリの言っていた「ぷにぷにボールド」をネットで検索してみた。

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それはすぐに見つかった。

ミドリが言っていたものは、ボールドの『ぷにぷにっとジェルボール』という柔軟剤入りの洗濯洗剤だった。何やらボールドのこれまでの液体洗剤の中でも最強の洗浄力らしい。

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「へえ、洗濯機にこのボールを一個入れるだけなんだ…。ミドリさんもコレで洗濯してるのか」

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秋山はジェルボールをぷにぷにするミドリを想像してみた。クールなミドリとぷにぷにボールの組み合わせも悪くない。秋山はそう思った。

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秋山は帰りにこの洗剤を買うことを決めた。これまでミドリとは話がしたくても何ひとつきっかけがなかった。しかし、いまや「ぷにぷにっとジェルボール」は秋山とミドリをつなぐ大切なものなのだ。

その日の夜、秋山は仕事を早く切り上げるとドラッグストアでボールドを購入することにした。

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秋山はボールドを2つ購入した。ひとつは自分用に、もうひとつをミドリにプレゼントしようと思いついたのだ。

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「きっと喜んでくれるはず」

秋山はそうつぶやくと、いますぐミドリにプレゼントしたい気持ちになっていた。秋山は時間を確認するとボールドの箱を持ったまま会社へ戻ることにした。

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12月の渋谷はカップルたちで彩られていくというのに、秋山のクリスマスの予定は今年もしっかりと空欄のままであった。

「今年はうまくいくような気がする」

ミドリへのプレゼントを手にした秋山は、いつもより少しだけ勇敢で、少しだけ大胆な男になっていたのだ。

しかし、大人の世界はそんなに甘くはなかった…。





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秋山は偶然見てしまった。

ミドリが知らない男と腕を組んで歩いているところを。

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秋山は、2人に背を向けてオフィスへと向かった。

何のためか?

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彼は、この香りを一生忘れないだろう。

ボールド [P&G]

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