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イタリア料理が専門の人気料理家、細川亜衣さん。結婚を機に東京から熊本へ移住したのが5年前。現在は一人娘の子育てをしながら料理教室も主宰し、忙しくも充実した毎日を送っているそうです。10月2日、スープの本も出版した細川さんに、著書とスープづくりについて聞きました。

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――スープの本を出版されるそうですが、写真を拝見して、自分の中にあるスープの概念がくつがえるほど、斬新なものばかりでした。

スープって、じつはとても幅の広い料理なんです。しっかりだしをとらなくてはいけないということでは決してなくて、食材そのものが持っている甘味や旨味、香りが液体に出れば、十分スープになる。デザートでもある程度液体があるものならスープだし、スープを自由な発想で考えたらいいんじゃないかな、というのが、この本をつくろうと思った動機のひとつでもあります。

――スープをテーマにした理由は?

スープというひとつの言葉で表してはいるけれど、素材の使い方をはじめ、多種多様な調理法がある自由な料理だということを伝えたいと思いました。スープをもっと展開していけば、パスタのソ-スにもなるし、リゾットもつくれます。これしかつくれませんというレシピよりも、見る人読む人がそれぞれ自由に発想を加えてもらいたいので、幅が広いというか、入る余地のある料理という意味でも、スープは魅力的だと思っています。

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メロンのスープ。青くて甘い香りがただよってきそう

――レシピの書き方も独特で、まるでエッセイを読むように、すんなり頭に入ってきました。

私の料理はけっして繊細ではないし、むずかしい技術も必要ないけれど、おさえておくべきことがそれぞれの料理にあるので、それがきちんとできれば、その人なりの美味しい味がでてくると思うんです。なるべくそれがしっかり伝わり、実用として役立つように、レシピの書き方には気をつけています。あと、目安になる分量は必要なところしか書いていません。味の好みは人それぞれですから。

――とくに印象深いスープのレシピはありますか?

母に子どものころよくつくってもらった「つまみ菜のスープ」。袋詰めで売られていたつまみ菜をお皿に入れて、エバミルクと熱々のコンソメスープをかけるだけの簡単なスープなのですが、食材の組み合わせや、コンソメスープをかけるだけで完成してしまうという、その魔法のようなつくり方が印象に残っていたんです。母のレシピからはだいぶ変化しましたが、私の場合は、やわらかい葉っぱに、生クリームと鶏でとった熱々のスープをかけてつくります。娘もごくごくと美味しそうに飲んでくれるので、私が幼い頃美味しいと思った気持ちが、娘も同じように感じられたのかなと思うと、うれしいですね。

20141009_soup_green.jpg母との思い出のレシピをアレンジしたスープ

――料理で大切にしていることは何でしょうか?

素材のよさはもちろんすごく大切ですが、それ以上に大切だと思うのは、最終的に美味しいと思えるところまで持っていく「意志」だと思っています。どんなにいい素材でいい組み合わせでも、ひとつ間違ったらまずくなることもありますので、仕事で料理をするときには、そこを絶対に間違えないようにという緊張感をつねに持っています。そうして料理をしているうちに、びっくりするくらい美味しい味が出てくるときもあるんですよ(笑)。家庭ではそこまで厳しくはなりませんが、やっぱり家族が美味しいねって喜んでくれる料理をつくろうと、いつも思っています。

細川亜衣さんに学ぶ、スープ料理を楽しむヒント

・自由な発想をもつ。食材の味が液体に出ればそれはすでにスープ。フルーツなど、どんなものもスープになる。

・基本のスープからのバリエーション展開を楽しむ。パスタのソースにしたり、リゾットにしたり。
・絶対においしくするという意思。大切な人においしく食べてもらうところを想像する。

▼プロフィール

細川亜衣/ほそかわ あい 1972年生まれ。大学卒業後イタリアへ渡り、各地を旅しながら料理を学ぶ。帰国後、東京を拠点に料理家として活動を続け、結婚を機に熊本に移住し、現在は愛娘と3人で暮らしている。夫は陶芸家の細川護光さん。熊本で料理教室「camellia」を主宰している。主な著書に『愛しの皿』(筑摩書房)、『30 Themes, 10 recipes』(リムアート)など。

▼細川亜衣さんの新刊

スープ』(リトルモア/2300円)

待望の新作レシピ集。トマトなど野菜を使った王道のスープから、メロンのスープ、焼き栗のスープなど、はじめてお目にかかるようなオリジナリティあふれるスープまで、32レシピを掲載。絶品レシピはもちろん、瑞々しい筆致のエッセイ、香りまで感じられるような写真もすばらしく、何度でも読み返したくなる。

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装丁は3種類。中身は一緒だが、すべてほしくなってしまうほどどれも美しい。

文/小口梨乃 撮影/野澤朋代

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