桑原ユキエ、29歳。最近、渋谷にある某ウェブメディアの手伝いをしている。

そんなユキエは、今朝からちょっと様子がおかしい。そのことに本人も気づいている。しかし、日常生活に問題がないということで、いつも通り会社に行くことにした。

ユキエはそういう性格なのだ。

でも、今回はさすがに気にしてもいいレベルかもしれない。なぜなら、今朝からユキエは少しだけ「浮いている」からだ。

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エレベーターの扉が開くと同時に、ふわふわと浮きながら出社するユキエ。

朝から忙しそうな社員たちは、彼女が浮いていることに気づいていない。しかし、アルバイトの秋山だけは浮いているユキエを目撃してしまった。

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「ラムちゃん…?」

秋山は思わずつぶやいた。確かに、ふわふわ浮かぶ姿は『うる星やつら』のラムちゃんに見えなくもない。

驚きのあまりユキエにくぎ付けになる秋山。ユキエはそんな秋山に気づく様子もなく、さっさと自分の席に座ってしまった。彼女の席は秋山の隣である。

「人が浮いている? まさか」

自分にそう言い聞かせた秋山は、席に戻ると、ユキエの姿をもう一度確認することにした。

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ユキエは浮いていた。

もはやキーボードも打てないほどに浮いていたのだ。あまりにも当たり前のように浮いているため、誰もそのことに気づいていなかった。

「聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥」

秋山がここでアルバイトをはじめるときに心に決めたことである。「一生の恥どころか、一生の謎になるかもしれない」そう思った秋山は、ユキエに話かけることにした。

「あのぅ、ユキエさん?」

しかし、ユキエは彼の声を無視するかのように、ふわふわと浮かびながらコピー機のほうへと飛んでいってしまった。

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「浮いている…」

目の前の出来事を信じることができない秋山。ふわふわとオフィスを漂うユキエは、コピーを済ませると何かを思い出したかのようにどこかへ出かけてしまった。

「人は…浮くのか?」

なぜユキエの体が浮いているのか。いくら考えても秋山にはわからなかった。出来ることならいますぐユキエのあとを追いかけたかったが、秋山のデスクには山積みとなった仕事が残されている。

「あとで聞いてみよう」

秋山は静かに座り直し、仕事にとりかかることにした。

それから昼過ぎまで、仕事を処理することに集中していた秋山。ルーティンワークに没頭することで、彼はユキエのことをすっかり忘れてしまっていた。

突然、秋山の携帯が鳴った。

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ユキエからだ。

「秋山君? いまから取材なんだけど、時間あったら手伝ってくれない?」

秋山のデスクには仕事がまだまだ残っていた。しかし、彼に断る理由なんてどこにもなかった。ようやくユキエに「浮遊の秘密」について聞くことができるからだ。

電話を切った秋山は、待ち合わせ場所へと急いだ。そこは秋山にとって初めての場所であったが、ユキエのことをすぐに見つけることができた。なぜなら…

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浮いていたからだ。

155cmほどの彼女の身長は、いまや175cmの秋山よりもさらに高かった。遠くからでもひと目でわかる存在感。秋山はユキエに近づくやいなや、上目遣い気味に質問した。

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「ユキエさんって今日、ちょっとだけ浮いてますよね?」

無言のまま手元の紙を見ているユキエ。

「ユキエさん…?」

秋山がユキエの顔をのぞきこもうとしたとき、突然ユキエが大声を上げた。

「しまった! いま何時?」
「え? 13時半ですけど」
「時間、間違えたみたい…。秋山、走るよ!」

突然、走り出すユキエ。

「ちょっ、ちょっと!」

秋山もユキエのあとを追うように走り出した。

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(すごい速さだ…)

ちょっとだけ浮いているユキエはとにかく速かった。そのスピードは文学青年の秋山が到底追いつけるようなレベルではなかった。

通りすぎる人たちが、浮いているユキエを見て指を差している。しかし、それほど驚いている様子もない。

「東京はそういうところなのかもしれない」

ユキエの背中を追いかけながら秋山は心の中でそんなことを考えていた。

この日の取材は、読者モデルのインタビュー。取材先ではユキエも立派なカメラマンである。

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(浮いている…)

ユキエはしゃがんでいるつもりでも、撮れるアングルはいつもより高くなる。ユキエはそのことに気づいていないのか、シャッターを押すたびに何度も首を傾げていた。結局、この日の撮影はいつもの倍近くの時間がかかってしまったようだ。

「ユキエさん、なんでちょっと浮いてるんですか?」

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「うーん…なんでだろ?」

オフィスでようやく聞くことができた秋山。しかし、ユキエは自分がなぜ浮いているのか分からないという。

「朝起きたら、いきなり浮いてたの」
「ユキエさん、昨日の夜って何か特別なことしました? いつもと違うこと」
「違うこと?」
「変わったものを食べたとか、変な人に会ったとか」
「会社の帰りに薬局よって、シャンプー買って…。あ、シャンプーを変えたかも」
「シャンプー?」
ハーバルエッセンスってやつ」

シャンプーを変えた…。

秋山は今日一日ずっと気になることがあった。それは、ユキエの髪が「いい匂い」だということ。それが何か関係しているというのか。

秋山は「ハーバルエッセンス」をネットで検索してみた。

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ノンシリコン上品なローズアロマの香り…そうか、ローズの香りだったのか」

秋山はさらに調べた。

ローズヒップビタミンEホホバエッセンス8種の天然由来成分を配合…かわいいボトルだなぁ」

秋山は首を横に振った。

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「そういうことじゃない。知りたいのは、なぜユキエさんが浮いているかなんだ」

秋山はもう一度サイトのトップ画像を見た。

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アガる、香る、快感シャンプー

ん…アガる?

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アガル? ナニガ?

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アガる…気分が…。

いや、体だ…!

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そういうことか!

このシャンプーを使ったから、ユキエさんの気分がアガり、ついでに体もアガってしまったということか!

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(秋山も浮いていた)



(おわり)

※本来はカラダではなく気分があがります。

ハーバルエッセンス [P&G]

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