サッカーはほとんどのチームが負けて終わる


4年に一度の祭典、ワールドカップも佳境を迎えています。今年の会場は最多優勝を誇るブラジルの地。酷暑の中、熱戦が繰り広げられています。日本も活躍が期待されていますが、残念ながら決勝トーナメントには進むことはできませんでした。

メディアでは批判が多いようですが、私はあまり不満はありません。なぜなら、今回のコラムで紹介するように、見苦しい勝ちより、堂々と負けることを選んだと思うからです。

世界で32カ国しか出場できないワールドカップですが、最初の一次リーグが終わる頃には、半分の国が消えていきます。今回もスペイン、ポルトガル、イギリスといった上位国が消えていきました。これからもどんどん敗退チームが増えていきます。

トーナメント方式のスポーツのほとんどは、「優勝者以外、負けて終わる」という宿命にあります。例外として3位決定戦で「勝って3位で終わる」がありますが、ほぼすべてのチームは負けて去ることになります。

高校サッカーや高校野球などはもっと厳しい勝ち負けの世界です。高校サッカーなどでは約4200の高校が参加して頂点を目指しますが、3位決定戦がないため、文字通り1チーム以外は「負けて、3年は引退」となります。

どんなにがんばっても、栄光のトロフィーを掲げて最後に笑える人はわずかなのです。

見苦しく勝つより、華麗に負けるほうがいい


サッカーでは、私はオランダが好きですが、オランダの基本的なノリは「1-0で勝つより、2-3で負けたほうがいいじゃん」というところです。

1-0の緊張感もいいのですが、ガチガチに守備を固めて1点を守るようなやり方になります。それよりも、お互いに攻め合って何度もゴールが生まれ(2-3なら5回もゴールが決まる!)、結果として負けてしまったほうが楽しいしお互いスッキリするではないか、というノリで、私は大好きです。

今回紹介するサッカーマンガは、「美しく負けよう」がキーワードの一冊『夕空のクライフイズム』です。

登場するのは監督が手堅いサッカーを目指すあまり選手がつまらなく感じているある高校。ドリブルだけが取り柄の主人公は余計なチャレンジはするなと怒鳴られ、スタメンは遠い状態にあります。

ところがこの監督が他校に引き抜かれて、真空地帯が生まれます。

そこに現れたのは謎の女の子と中学時代の恩師の先生。なんとこの先生、就任していきなり「最高の負け試合をして、美しく散ろう」と言い出します。

彼の掲げるサッカーでは、手堅いサッカーはいらないというのです。勝敗よりも、格好良さとかドキドキするようなプレイが大事だといいます。そんな中二病みたいなサッカーありえないだろうと驚く部員をよそに、謎の女の子(中3で監督さんの娘らしい)を軸にクライフイズム、つまりオランダのノリのサッカーで練習がスタートします。

1巻ではまだ、クライフイズムにもとづくトレーニング(これがまたおもしろい)が行われ、紅白戦がキックオフするところまで。

しかし、続きが楽しみになってくる展開です。

作者のマニアックな愛情がふんだんに披露される


読み終えると、作者のサッカー好きはびしびしと伝わってきます(ひしひしと、ではなく!)。

主人公が「山瀬功治選手が好きなんだよね」と語り出すエピソードで、2008年のスーパーゴールや2007年のスーパーゴールを紹介していますが、確かにあれはすごいゴールでした(2007年の浦和戦は特に)。


ですが、日本代表ではなく、あえて山瀬選手がここで出てくるあたりに作者のマニアックさが窺いしれます。

海外のサッカートレンドも、大胆に例えを出します。ヒロインの女の子が、グアルディオラ監督の戦術はドラクエ的に例えると「ガンガンいこうぜ」ですが、クライフは「カオスをうみだせ」です、なんてざっくり例示するのですが、大胆でかつ適切です。

コミックは絵柄の美しさだけでなく、ストーリーのおもしろさがあって成り立つと思いますが、作者のあふれるばかりの「愛」も重要です。愛のこもったサッカーマンガぜひ、このタイミングで読んでみてください。

日本代表は美しく敗れることができたか


美しく破れることは恥ではない 無様に負けることを恥と思え

コミックの中で紹介されるクライフの言葉です。私も勝敗より、「いいゲームだったか」のほうが重要だと思います。なぜなら勝敗は最後は運が左右するからです。

今回のワールドカップ、日本代表を見る限り、期待されていた選手がケガやスランプなどで調子を落としていて、初戦でうまく波に乗れないまま3戦を終えてしまったと思います。しかし、チームは堂々としたチャレンジをしてきた4年間であったと思います。

確かに南アフリカのときや日韓ワールドカップのときのような試合運びをすれば決勝トーナメントに進めたかもしれませんが、私はチャレンジをして壮大に失敗した今回の日本代表のほうがおもしろかったと思います。

これからの日本代表にとっても、クライフの言葉は示唆に富んでいるのかもしれません。

さて、日本がいなくなったワールドカップですが、まだまだ楽しみです。むしろナショナリズムを気にせずスポーツをエンジョイできるのです。最後まで楽しみたいものです。

夕空のクライフイズム

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