涼しい喫茶店で暖かいカフェラテを飲みながら原稿、と思ったら冷房控えめで汗が噴き出すFP山崎(@yam_syun)です。

今回はいけだたかし氏の、普通の人の日常を描きながらぞくっとする短編集をご紹介します。

いけだたかし氏といえばアニメ化もされた『ささめきこと』が有名です。こちらはいかにもな学園ラブコメ(女性同士のカップルだが)という感じの長編でした。今回紹介するのは『プラトニック・ホーム』『34歳無職さん』の2冊です。


■初期短編集の良さを味わえる『プラトニック・ホーム』

新人作家さんはいくつか短編を書いたのちに連載をつかむことが多く、ヒット連載をつかんだ前後に初期短編集が発売されることがあります。

連載コミックのラストに1作ずつ短編を収録することもあり、これも作家の意外な作風を知るチャンスなのですが、やはり短編がいくつもまとまって読めるのも楽しいものです。

こうした短編は1作ごとに力がこもっていて、連載では得られない「濃さ」があります。『プラトニック・ホーム』は本人も後書きで20代の若さにまかせて書いた、と述べているように初々しさと作家のこだわりとがよく現れている1冊です。

いけだたかし氏の短編集のおもしろさは、日常を書き込んだ後にはっとさせる展開に持ち込むことだと思っているのですが、普通の学生生活や家族の営みなどを描きつつ、心を捕らえるクライマックスを上手に作り出します。

1冊を通したテーマの一貫性はないのですが「日常」に潜むぞくっとした感覚が通して描かれているように思います。『ささめきこと』の百合展開や、長編にする必要から生じるキャラクターやギャグテイストがなじまなかった人こそ、1度読んでほしい短編集です。



■ネットで一時期盛り上がった『34歳無職さん』

一時期、34歳無職の女性の日常を描く1コママンガがネットで話題になりました。私も知っていたのですが、それが『ささめきこと』の作者と同一人物であるとは全く知らずに、「お、34歳無職さんが連載されていたんだ」とコミックを買って帰りました。読んでいて「えっ!」と気がついたのです。

主人公は「34歳で訳あって無職の1年を過ごしている女性」。なかなかインパクトのある設定ですが、特に恋愛沙汰も出てきません。普通の木造アパートに暮らし、安売りのスーパーの特売品をにらみながら質素な生活をしています。

「そんな女性の日常のどこがおもしろいのか」と思うと、これがとてもおもしろいのです。ここでもいけだたかし氏の得意とする書き込みの良さが出ており、クリーニングについてきたクリップを空き缶にためているカットとか、室内干しの下着のたれ具合とか、テレビの脇に置かれた掃除機といったアイテムが、現実感のある世界を描き出しており、また作品全体のトーンを作っています。

ベースとなっている1コママンガは「34歳」とグーグルで検索すると「34歳無職さん」が候補にでてくるほどですから、さっと読んでみて、雰囲気に興味を惹かれたら、コミックを買ってみるといいでしょう(読み過ぎるとコミックの今後の展開まで)。

こちらは短編集ではなく続刊がありそうですが、コミック後半で「34歳無職女性」の驚くべき設定が明かされます。その設定を踏まえて読むとまた違った感覚で1冊が読み直せるから不思議です。

静かな空気感のもと、日常に潜むぞくっとした感覚をコミックの世界を通じて味わってみてはいかがでしょうか。

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