講談社からイラストつきのマネー教育本を出す機会があれば、今日紹介する、とよ田みのる氏に挿絵をお願いしたいと本気で考えているFP山崎(@yam_syun)です。

今回取り上げるのは、とよ田みのる氏初の短編集『とよ田みのる短編集 CATCH&THROW』です。今日のテーマを一言で言うと「絵柄に油断してスルーせず、キャッチせよ!」です。

■絵柄にだまされると、ズドンと直球を投げ込まれる

とよ田みのるの絵を見て、ほとんどの人は「うーん、絵が下手な人?」と思うことでしょう。そして、買わずにスルーしてしまう人も多いと思います。最初に言ってしまいますが、これはとてももったいないことです。

確かに大友克洋氏(『AKIRA』)とか、井上雄彦氏(『スラムダンク』、『バカボンド』)と比較すれば、精緻な描き込みがあるわけでもなければ、躍動する肉体が写実的に描かれることもありません。

しかし、1冊手にとって、たった1話でも読んでみると、その油断していた心に、ズドンと直球で「感動」を放り込まれます。これがまたおもしろいほど、スパッと心の中に入り込んでくるので、絵柄から勝手に感じていたイメージと、「お話の強さ」との落差がむしろ感動を高めてくれるように感じるほどです。

考えてみれば、絵の精緻さそのものは感動と関係ありません。技術的にはルノアールのほうがより写実的ですが、ゴッホはやはりインパクトがあります。技術的に優れた絵画で感動することができるように、ゴッホの絵でも感動できます。マンガも同じだと思うのです。

短編集は「興味はあったけど、なかなか読む機会のなかった作家」を読むのにいいきっかけだと思いますが、とよ田みのるを見くびっていた人にとっては、これは絶好の1冊目だと思います。

■作家と読者のあいだで「CATCH&THROW」する

作家自身も後書きで書いていますが、とよ田みのるの真骨頂は読者と作家とのあいだの感情のキャッチボールにあるように思います。
表題作「CATCH&THROW」は、転校してやってきた女の子がフリスビーに夢中になる姿に引っぱられるように、熱い感情を取り戻す主人公の男の子のストーリーが短いページ数を駆け抜けるように描かれます。読み進めるうち、直球で投げ込まれた感情は、そのまま自分を動かします。心地よい感動は、何か自分を気持ち良くしてくれ、明日へ向けた元気を与えてくれます。

表題作以外の短編も、ズドンズドンと心の奥に感動を放り込んでくる佳作ばかりです。たぶん、彼はコンパクトなストーリーのほうにうまさがある作家だと思いますので、「実はちょっと興味あったんだよね」という人はぜひ手に取ってみてください。

ところで、とよ田みのるは今でもコミティア等の同人誌即売会に顔を出しており、いつでも会って感想を伝えることができます(私はまだお会いしたことがないのですが)。Twitterでもどんどんメッセージを送ることができ、けっこう返事もされているようです。そういうところもまさに「CATCH&THROW」な感じです。

■2冊目を買うなら『FLIP-FLAP』から試してみてはどう?

私が、とよ田みのるの作品に始めて触れたのは『FLIP-FLAP』です。こちらはゲームセンターの端っこに置かれているピンボールをテーマにした熱い1冊。何巻もストーリーを重ねず、全1巻でジェットコースターのようにストーリーが進展します。クライマックスシーンでは、おそらく鳥肌が立つことでしょう(今思い出してもぞわっとした感動がよみがえります)。今回の短編集を気に入った人に強くオススメでき、2冊目として気軽に手を出せる1冊です。

これで気に入った人は『ラブロマ』(全5巻)を集めてみるといいでしょう。「こんなラブコメマンガがあったのか!」と心に染みること請け合いです。そのあとは一気に『友達100人できるかな』と新作『タケヲちゃん物怪録』まで駆け抜けてみるといいでしょう。

とよ田みのるを読んで感動する気持ちは、1度味わってみないと、もったいないですよ!

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