■泣けるサッカー漫画という新しい世界

Jリーグも盛り上がりワールドカップ最終予選も動き出す季節です。J2に落ちる前から浦和レッズサポのFP山崎です。

今回取り上げるのはサッカー漫画『1/11 じゅういちぶんのいち』(執筆時3巻まで刊行)です。サッカー漫画というとスポーツ青春もののイメージがあり、汗臭さを敬遠する向きもあると思います。しかし、この1冊はまったく違うサッカー漫画です。それは「泣けるサッカー漫画」というところです。

本書には高校に入ったばかりのあるサッカー少年が登場し、彼が1度あきらめかけたサッカーへの情熱を取り戻し、周囲を巻き込み、人の心を動かし、そして成長していく様が描かれています。といっても、高校生ですからクラスメートとの日常、サッカー部以外のサークル活動に夢中になる友人たちもでてきます。いずれも等身大の高校生のひたむきな姿が描かれており胸を打ちます。各話の終わりが近づくと鼻の奥が熱くなり、クライマックスシーンでぽろぽろ泣いている自分に気がつきます。私はコミック、映画、アニメ、小説を読んでいて泣いたことがほとんどありません。感動はするのですが、ドライアイのせいか涙をこぼすには至りません。横で相方に先に泣かれてしまい、泣くタイミングを逸してしまうこともしばしばです。

そんな私が『1/11 1巻』『1/11 2巻』『1/11 3巻』と連続泣きを達成してしまいました。自分でも驚きで、今でもレビューを書きながら読み返していると、うるうるしてきます。たぶん、この「泣き」はサッカーが好きかどうかは関係ありません。これは「サッカーを使った泣けるコミック」なのです。

■本気で全力になったあと、ぽろぽろ泣ける瞬間がやってくる

できれば「読んで泣いてほしい」ので、細かいシチュエーションについて紹介することはできません。それぞれのエピソードに登場する人物の来歴そのものが泣きのストーリーにつながっているため、ここで話して興をそぎたくないのです。シチュエーションを抜きに魅力を語るのは難しいのですが、もし理由を簡単に述べれば、「本気で全力になったあとの瞬間」がこのコミックの醍醐味なのかもしれません。

人が本気で全力を出すことはほとんどありません。どんな試験であっても全力を尽くして試験に臨める人はまれです。学校のスポーツテストでも本当に全力を出していなかった人は多いでしょう。大人になるほどその傾向は強まります。「明日から本気出す」ってやつです。『1/11」』の登場人物は、ふとしたきっかけで「本気で全力」を出すことになります。あるいは全力を出すことの大切さを思い出します。その全力は報われることもあれば、報われないこともあります。しかし、全力のあと、ぽろぽろと泣けるシチュエーションがやってきます。そこに読者は心を奪われるのです。

作者の叙述が無理なく感動につなげているのは、どのエピソードにも感心されます。作者の絵柄のタッチが、スポーツ漫画というよりは少し叙情的なことも効果的です。いつもと違うコミックに手を出してみたくて、かつ泣きたい気分に至った人には『1/11』をおすすめします。同居人のいる人は、できれば独りのときに読んだほうがいいと思いますよ。

■サッカー漫画の新時代について

サッカー漫画といえば誰もが知っている『キャプテン翼』が思い浮かびます。しかし、最近のサッカー漫画は絵柄もストーリーもしっかり練り込んだものが増えていて、注目のジャンルとなっています。

最近のヒットとしては、モーニング連載の『ジャイアントキリング』でしょう。監督という切り口から新しいサッカー漫画を生み出しました。また、以下のサッカー漫画もおすすめします。いずれも「こんなサッカー漫画があったのか!」と感動できること請け合いです。こちらはサッカー好きのための追加の3冊です。

フットボールネーション』:ヨーロッパのサッカー選手はなぜすらっとした体格で当たりに強いのか。なぜ日本人はそうでないのか。隠れたサッカー漫画の名作『我らの流儀』の作者が「体幹」をテーマに日本サッカーへ一石を投じるコミック。センスのある絵にも引きつけられます。

Uー31』:『ジャイアントキリング』の綱本将也が最初に手がけたサッカー漫画です。アトランタ世代のある選手がメディアに持ち上げられ、慢心したすえにもう1度日本代表としての能力を開花させるまでが全2巻で鮮やかに描かれます。これも泣けますので2巻一気読みを強くおすすめします。

サッカーの憂鬱~裏方イレブン』:サッカー漫画「ORANGE!」を描いた作者(最近では愛媛FC公式キャラのデザインも担当)がサッカーの裏方を取り上げたオムニバス。広報、通訳、ユースのスカウティングに審判といった表舞台を支えるメンバーを取り上げます。いずれもよく考証されており、うならされます。

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