連休中は旅行にも出掛けず、もっぱら積んでいるコミックの取り崩しにいそしむFP山崎(@yam_syun)です。

今回は「女性書店員」をテーマに取り上げてみたいと思います。書店員が主人公となったコミックといえば『本屋の森のあかり』が大ヒットしていますが「もう誰でも知っている本はあえて避ける!」というポリシーにもとづき、ここではあえて取り上げません。

今回取り上げてみたいのはひまわりさん(執筆時点で2巻まで刊行)。ある高校の前にひっそりとたたずむ古書店の女店主と、実は本なんて全然読まない女子高生とを軸にのんびりと進む物語です。

■古書店ひまわり書房の女性店主、ひまわりさん

ひまわりさんとは、ひまわり書房の女店主のあだ名で、そのお店と同様に物静かな雰囲気の女性です。ロングの黒髪と眼鏡が印象的な若い女性が、なぜこんな古いお店で古書店を営んでいるのかは誰も知りません。

そこに、ひまわりさんに憧れる快活な(でも本は全然読まない)女の子・まつりが現れるところからお話はゆっくりとスタートします。そして、ひまわりさんとひまわり書房の秘密(といってもハリーポッターのように壮大な秘密はありませんが)が、ゆっくりと明らかになっていきます。1巻の後半に向けては、ひまわりさんとそのお兄さん(作家)との関係、2巻の後半にかけては、ひまわり書房とひまわりさんとの関係が描かれますが、徐々に後半に向けて叙情が高まっていくのが、読んでいてとても気持ちいいコミックです。

■人は独りではないことをゆっくり考える

人付き合いが上手ではないひまわりさん(まつりとのつながりから徐々に世界とつながっていく)の周りにはたくさんの人たちがいます。本はまったく読めないまつり(でも徐々に本の楽しさを知っていく)、健康優良児でシスコンの風子(まつりの妹)、友だちづきあいに悩む小学生の女の子、地元商店街の人々、作家のお兄さんやカメラマンのお姉さんたちとのエピソードから、ひまわりさんの人となりが少しずつ描かれていきます。そして、人はひとりではないという当たり前のことを、じわじわと気づかせてくれます。

かつての個人商店は、ゆっくり時間が流れていました。雨が降れば仕事を1日延期したり、日が暮れれば閉店したり、お店はひとつあれば十分だったりしたものです。

チェーン店があふれ、どこの街にも同じ看板が見受けられるこの頃において、かつての商店の風情を残しているのは、街の喫茶店だったり、古本屋だったりします。どちらもチェーン店の進出が激しいものの、こぢんまりとした商売を、地元と密着して続けているお店は街にとってのシンボルでもあります。

『ひまわりさん』を読んでいると、ゆっくりとした時間の大切さも感じられます。本当に落ち着いた気分のときに、のんびり読みたい1冊です。

『本屋の森のあかり』を読んだことのある方には、次に読む1冊として『ひまわりさん』、いかがでしょうか?

■黒髪で、ロングで、眼鏡の女書店員はブームである?

ところで、ひまわりさんのように「女性で、黒髪ロングで、眼鏡をかけた、古書店女店主」といえば、ライトノベルの『ビブリア古書堂の事件手帖』もあわせてチェックしたいところです。

鎌倉の片隅にある古書店という雰囲気で、古書に関する知識は卓越しながらも人見知りする女店主が織りなすストーリーです。コミカライズもスタートしたところなので、コミック発売が楽しみです(こちらは2012年本屋大賞8位にもランクインし、2巻目で累計200万部突破ということですから、すでにヒットの火がついてしまった感はあります)。

あと、2巻が出たばかりの『デンキ街の本屋さん』もオススメです。こちらは秋葉原にある書店(おそらく、「とらのあな」がモデル)を舞台にしたコメディーです。新刊コミック、同人誌を取り扱う秋葉原の大型書店ならではのドタバタに、つい笑ってしまいます。こちらも一応、黒髪ロング眼鏡の女店員(プロデビュー前の同人作家でもある)が登場します。

あ、そうそう。メディアファクトリーの公式サイトでは、ひまわり書房オリジナルのブックカバーをPDFで配布しています。書店といえばオリジナルカバーですよね。大事な本にひまわり書房のカバーをかけてはいかがでしょうか(1巻発売時のブックカバー)(2巻発売時のブックカバー)。

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