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「泊まる」ことの未来が広がる瞬間を味わってきたよ


いま「泊まる」ことの価値が見直されています。

ホテル業界は単なる高級感やおいしいだけの料理を離れて地域の特色を生かした施設やサービスに力を入れ、若者たちは全国に新しいスタイルのゲストハウスを次々と生み出しています。

さらに人々は、「泊まる場所」として他人に自宅を解放しはじめました。

貸す人と借りる人をつなぐ、宿泊施設のマーケットプレイス「Airbnb」の世界的な広がりは、単に副業としての金銭的な目的だけではなく、自宅に他人を招き入れることで生まれる「オープン」で「ゆるい」つながりを人々が楽しんでいることが大きな要因だと、わたしは感じています。

そんな風に「泊まる」や「泊める」ということが注目されているいま、世界的な観光都市でもある京都でちょっと変わったイベントが開催されました。

タイトルは『Beyond the Hotels! ~“泊まる × ???” が生み出す、新しいクリエイションの可能性~』

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一泊二日のワークショップを通じて、「泊まる×???」のフレームで新しいサービスを考えようというイベントです。

主催である株式会社ロフトワークが運営元である“知恵と知恵をつなぐプラットフォーム”「OpenCU」のイベントとして開催されました。

そして会場は、今年1月京都に誕生した宿泊型のアートスペース「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku(クマグスク)」。「展覧会の中に宿泊し、美術を“体験”として味わえる」というユニークな宿泊施設で、ルーミーでも紹介されています。

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この内容にこの会場、「なんと面白そうなイベント!」というわけでわたくし中村が参加してきました。

開催は4月3日の夜から4日の朝までの一泊二日。参加者には、ゲストハウスオーナー、建築士、まちづくりコーディネーター、不動産業、自治体職員などなど、全国各地から(東京や福井や鳥取からも!)職種も年齢もさまざまな人たちが集まっていました。

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まずは主催者であるロフトワークから開会のご挨拶。ロフトワーク烏丸(京都オフィス)は移転を計画中で、なんと新オフィスには「泊まる」機能を備える予定とのこと! 詳細の発表が楽しみです。

その後、まずは個人ワーク。各参加者が、自分自身のスキルや興味と「泊まる」を掛け合わせた「泊まる×???」のアイデアを練ります。

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様々な分野から参加者が集まっているだけあって、多種多様なアイデアが生まれました。

ちなみにわたしが出したアイデアは、「泊まる×宇宙」

わたしは学生時代に宇宙を勉強していたのですが(地球惑星科学という珍しい分野でした)、宇宙を専門とする科学者の話を一晩じっくり聞いてみるのも面白いんじゃないかと考え、そのアイデアを「たまには一晩、宇宙の話をしてみよう」という企画にしました。

このように各参加者が生み出した全てのアイデアを壁に張り出し、そこから参加者&主催者メンバーの投票により上位5つにしぼって、チームを作ります。

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選ばれたアイデアは次の5つ。

『たまには一晩、宇宙の話をしてみよう』
『泊まれる図書館』
『丁寧な朝ごはん』
『京都の”平熱”に会いに行く』
『泊まれる映画館』

どれもタイトルを見ただけでワクワクしてしまう魅力的なアイデアです。そして、ちゃっかりわたしのも選んでいただきました!

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さて、ここで夕食タイム。メニューは森林食堂さんによるカレーです。森林食堂さんは、「モノづくり精神をスパイスと共に注ぎ込み、愛される唯一のカレーを作り出し」ている京都の話題のカレー屋さん。

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今回はこのイベントのための特別メニュー「good night(具無い)カレー」という「具の無いカレー」を用意してくださいました。2種類のカレーは、どちらもスパイスの個性がしっかりとひき立ったおいしくて、脳みそを元気にしてくれるカレーでした。

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食後は各チームがそれぞれ部屋に分かれてのグループワーク。5つのアイデアを詳細化・具体化して、ひとつのポスターという形でビジュアル化します。

各部屋からは真剣な議論の声と、ときおりの笑い声が。

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わたしの参加する「泊まる×宇宙」チームでは、わたしのアイデアから出発したものの、メンバーに舞台芸術制作に関わっている方実家が銭湯という方がいたことから企画が思わぬ方向に進展していきます。

「会場は銭湯にしよう。脱衣所なら大人数泊まれるし。」

「銭湯には女湯と男湯があるから、女湯では科学者に最新の宇宙の話をしてもらって、男湯では宇宙をテーマにしたダンスパフォーマンスを上演しよう。」

「夜に宇宙をテーマにするなら、いっそのことどちらも真っ暗闇でやろう。その方が宇宙の神秘をより感じられるはず!」

と、ふざけているようで本気の議論が展開し、しまいには「神秘萌え」(目には見えない宇宙の神秘に心がときめく状態)というニューワードが誕生する事態に。

そして、最終的な企画のタイトルは『宝永湯 in BLACK ~銭湯で宇宙を学び、感じるオールナイトイベント~』に決定。(「宝永湯」は、メンバーのご実家の銭湯です)

デザイン経験のあるメンバーが中心となってポスターを完成させました。

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こうして夜が更け、一日目は解散。一部の参加者はそのままkumagusuku(クマグスク)に宿泊しました。(残念ながらわたしは帰宅しました。)

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こちらは希望者のみに提供された朝ごはん。わたしは食べられなかったのですが、食べた方は口をそろえて「絶品!」と言っておられたので、kumagusuku(クマグスク)にお泊りの際にはぜひ!

翌朝参加者が再集合して、完成したポスターを使って各チームによるプレゼンテーションを行いました。他の4チームの内容をご紹介します。



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『そうだ 京都、 住もう。』

住むためのすべての機能を揃えた、移住体験型ホテルというアイデア。暮らすように滞在し、さらに京都の不動産屋とも連携し情報を得ることで、実際の移住に向けたリアルな京都を体験することができる。



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『ハンモックナイト@図書館』

京都に数多く存在する図書館で、本に囲まれて泊まろうという企画。本棚の間にハンモックを吊るし、その中で眠ることで本の森にいるような気分が味わえる。さらに、この企画のチラシは図書館の本の中にそっとはさみ込んでおいて、図書館で本を手に取った人が偶然に見つけるというなんとも素敵なアイデアには、会場が沸き立ちました。



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『Theater in Hostel “24FILMS”』

大きな倉庫などを改装し、スクリーンの前に複数の部屋を作ってそこに泊まりながら映画を楽しむという大胆なアイデア。芸術性の高い映画を中心に上映し、同じ施設内に作るカフェスペースなどで、宿泊者同士が映画について語らい合うこともできるようにしたいとのこと。



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『旅する朝ごはん』

全国のゲストハウスで、宿泊者が自分たちでじっくり丁寧に朝ごはんを作って食べるという企画。その地域の食材を使ってその地域の料理を作る。メンバーのひとりが、「一人暮らしで普段なかなか朝ごはんを作れないけれど、本当は丁寧に朝ごはんを作りたい」という想いを持ち、別のメンバーが鳥取のゲストハウスのオーナーであったことから生まれた企画。



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どれも一晩で生まれたとは思えない具体的で面白そうな企画。

これら5つから、ロフトワークのみなさんとkumagusuku(クマグスク)オーナーの矢津吉隆さんが審査し、ロフトワーク賞に輝いたのは『旅する朝ごはん』でした。

場所を選ばず、全国各地に展開できるソフトとしての企画であること、そしてポスターの一部を切り抜き、砂壁を利用して鳥取砂丘を表現するなどのプレゼンテーションにおけるクリエイティビティの高さも受賞の理由でした。

この『旅する朝ごはん』は、実際にいま実現に向けて動き出しているそうです。実現したらわたしもぜひ参加したい!(「泊まる×宇宙」企画も実現させたいので、興味のある方は中村までご連絡を!)

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今回のイベントを通じてわたしが感じたのは「泊まる」という行為は「夜と朝をつなぐ」ことで、そしてそこには無限の可能性が広がっているということです。

夜を夜として楽しむことも、朝を朝として楽しむこともできますが、「泊まる」ことでそのどちらでもない新たな可能性を生み出すことができる。

ロフトワーク賞を受賞した『旅する朝ごはん』も、「泊まる」ことで朝ごはんのために夜を活用するという視点が、わたしには魅力的に映りました。

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また今回は、「場所を持つ人(ゲストハウスや銭湯など)」×「アイデア・想いを持つ人(朝ごはんや宇宙など)」が、同じ空間で一泊二日を過ごしたことでアイデアの具体性・実現性が格段にアップしたことも興味深いです。

様々な分野の人が集まり、一晩熟成時間を作ることで、新しいアイデアが具体的なカタチでこの世に誕生する。その瞬間に立ち会えたことは、とても幸せな経験でした。

OpenCUでのレポートはこちら
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コーヒー焙煎家でたまに物書き。“暮らしたい町で暮らそう”と2012年に東京から京都府大山崎に移住。翌年「大山崎 COFFEE ROASTERS」を開業。2014年には地域の魅力的なモノゴトを残すべく“まちのこし”活動をスタート。学生時代は宇宙を研究していた物理好きが、いまは哲学に夢中。前職はビジネスコンサルタント。1981年生まれ。ラーメン、好きです。執筆記事一覧はこちら

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